2024 年 80 巻 20 号 論文ID: 24-20003
自然災害などのようにめったに発生しないイベントに個人が直面した場合,経験不足,不完全な情報,および周囲の環境の状況認識不足により,ヒューリスティックな意思決定が優先される場合がある.このことは,避難遅れが頻繁に発生している豪雨時の避難行動を論理的な思考のみを考慮してモデル化することに疑問を投げ掛けるものである.そこで,本研究では,防護動機理論と自然主義的意思決定の双方の枠組みを援用し,豪雨時の避難行動の意思決定過程をモデル化する.具体的には,2019 年の台風 19 号で被害を受けた住民の避難行動の調査結果を用いて,避難行動意思決定モデルを推定した.そして,平時の防災への取り組みの強化や豪雨時の状況認識を促す施策等が,早期の水平避難にどの程度効果があるかをシミュレーションにより検討した.