抄録
本論文では,防災情報システムが十分に機能しない要因の一つとして,基礎自治体における入力作業員の不足に着目し,これを補うための実動機関からの情報共有について言及する。これまで,実動機関(消防,警察,自衛隊,海上保安庁)が把握した情報は,印刷物等により,都道府県や基礎自治体に個別に共有されてきた。このため,各自治体では,実動機関から得られた情報を,改めて防災情報システムに入力し直す必要がある。こうした状況を改善することを目的に,愛知県の防災訓練において実証実験を実施した。SIP4D(基盤的防災情報流通ネットワーク)に連接されている防災情報システムを各実動機関に提供し,防災情報システムにより情報共有する効果を検証した結果,実動機関からの直接的な情報共有の有効性,および課題が明らかになった。さらに,令和6 年能登半島地震において,上記の実証実験に用いたシステムを実動機関に提供し,その有効性を実証することができた。