歯科材料・器械
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原著
光重合開始剤がりん脂質リポソーム相転移特性に及ぼす影響に関する熱量的研究
藤沢 盛一郎門磨 義則
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1986 年 5 巻 2 号 p. 238-245

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抄録
可視光線重合型レジンシステムが我が国でも広く使用されるようになってきた.このシステムに於いて, ジメタクリレートモノマーは, 可視光線照射による増感剤(CQ, カンファキノン)と還元剤(DM, ジメチルアミノエチルメタクリレート)の化学反応により重合開始される.これら光感受性物質により誘起される生物学的反応をモニターするため, (CQ, ベンジル(BZ), 9-フルオレノン(9F), ベンゾインメチルエーテル, アゾビスイソブチロニトリル, アクリジンオレンジ(AO), アントラセン(AN)中性赤(NR)などの光感受性物質により誘起される, ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)リポソームの相転移特性(相転移温度T, エンタルピーΔH, エントロピーΔS, DSCピークの高さ/半値幅, H/HHW)の動的挙動変化を示差走査熱量計(DSC)を用いて熱量的に研究した.可視光線重合開始剤において, 9F+DM, BZ+DMは大きな相転移変化(Tの低温シフト, ΔHの減少)を示したが, CQ+DMの変化は小さかった.芳香族ケトン類(9F, BZ)は脂肪族ケトン(CQ)よりリポソーム相互作用が大きかった.AO, NRはΔHの変化が小さかったが, Tを高温シフト(1〜3℃)させた.またAO, AN, NRは30℃, pH10, 酸素存在下, 光増感されると, ΔHとΔSに大きな変化を示した.二重結合をもたないDMPCは, ラジカルによる脂質過酸化は起こらない.それ故, 光感受性物質によるリポソームの強い相互作用は光増感により励起された増感剤(CQ, BZ, 9F)+還元剤(DM), および光感受性物質(AN, AO, NRなど)+酸素の電荷移動錯体によりひき起されることが明らかになった.
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© 1986 一般社団法人 日本歯科理工学会
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