抄録
設備投資の意思決定をする際に, その設備の経済寿命を正しく見積もることは必要不可欠である.ところがこれまでの経済寿命の研究では, この問題を扱う上で考慮すべき租税(法人税, 住民税の法人税割および事業税のように所得に対して直接ないし間接的に課税されるものと固定資産の価格に対して課税される固定資産税)に関していかなる考慮もされていなかった.そこで本稿では, 類似反復型の仮定をおいた経済寿命決定の基本モデルを前提とし, 自己資金によって投資を行う場合の租税を考慮した経済寿命決定モデルを構築する.これによって, 租税を考慮すると経済寿命が長くなる傾向があること, 経済寿命を求めることのみに焦点を合わせた場合, 資本コストが小さい場合は租税を考慮しなくても十分であり, 資本コストが大きくなるにつれて考慮する意義が大きくなること等がわかる.