日本医療マネジメント学会雑誌
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事例報告
小児科勤務医は夜間勤務後に明らかな集中力の低下をきたす
中野 貴明
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2020 年 21 巻 2 号 p. 91-96

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抄録

 現在、医療界では勤務医の夜間勤務に伴う長時間労働が問題となっている。特に勤務医は、夜間勤務後もそのまま日中の業務を行うことも多く、集中力の低下による医療ミスの発生が懸念されている。本研究では、小児科勤務医の夜間勤務後の集中力の低下を定量的に測定し、どのような因子が集中力の低下に関連するかを検討した。手稲渓仁会病院小児科医師を被験者として、2018年12月から2019年1月の夜間勤務終了後に Psychomotor Vigilance Task(PVT)を行い、集中力を評価した。アンケートで、夜間勤務での呼び出し回数、行動内容、研修医か指導医かを確認した。別の任意のタイミングでPVTを行い、被験者ごとのコントロールとした。被験者7名の全員が、コントロールと比較して夜間勤務後にPVT値の遅れを有意に認めた。PVT値の遅れに関連する因子は、呼び出し回数、睡眠時間であった。研修医の方が指導医と比較して、有意に反応時間が遅れており、集中力の低下を認めた。本研究では、夜間勤務後の集中力の低下を、定量的に明らかにした。特に研修医は、経験が少なく診療時間の延長と、それに伴う睡眠時間の減少のため、心理的および身体的負担がかかりやすい状態にあると考えられた。夜間勤務を行う医師は、自身の健康のみならず、安全な医療を提供するために、勤務体制を整える必要がある。

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