総合健診
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高齢者の健康評価
―その意義と問題点―
道場 信孝久代 登志男日野原 重明
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2008 年 35 巻 3 号 p. 341-347

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抄録
世界最長寿国となった我が国において, 高齢者の健康の維持・増進は医療政策上の重要課題の一つである。寿命の延長とともに, 疾病や機能障害の発症も遅れるとすれば, 我が国の社会的活性化が維持される可能性も期待できる。高齢者の健康の維持・増進においては適切な健康評価と, それに基づく予防的戦略が効果的に実践され, かつ, その効果が科学的に実証されるとともに, 費用/効果比についても評価されなければならない。高齢者の健康評価に基づいて適切な生活習慣変容の指導が行われることによって, 疾病のリスクを減じ, 罹病率や死亡率が低下するという確証は得られていないが, 米国におけるMedicareの給付対象者に対するアウトカム研究では中間報告を見る限りその効果には肯定的であり, 一次, 二次予防における禁煙, 減量, 運動, ストレスマネジメントにはそれらの有用性が期待される。CGAは多職種の医療者による包括的な評価であり, そこでは対象者の医学的問題のみならず, 認知, 情緒身体機能, 社会的, そして, 経済的状況がケアギバーの問題も含めて評価される。これらの結果は支援の必要性を評価したり, 介入やケアのプランを立てる上に役立つが, CGAが最も有効なのは機能的に脆弱化している高齢者の場合であり, その有用性は転倒, 認知機能の低下, 養護施設への入所を予防し, さらに健康感や生活への満足度を高めることにある。CGAとその運用におけるコストと効果に関しては研究が極めて少なく結論は得られていない。CGAによる介入を誰にどのように行うかが重要な課題であり, 少なくとも対象とする高齢者を特定し, すべてのプログラムにCGAを導入し, 介入の態様をケアのプロセスが明らかな基準化されたマネジメントによる長期の慢性ケアとし, かつこれら一連のプログラムに適した多職種連携のチーム医療で行うなどのminimum specificationの枠組みの中でtrialが行われる必要がある。このようなプロセスを経て効果や費用の問題も解明されると思われる。
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© 日本総合健診医学会
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