総合健診
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がん―治りたい, 治ってほしい, 治したい―「消化器がん」とどう取り組もう
今岡 真義
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2008 年 35 巻 3 号 p. 336-340

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抄録
本邦の死因の第1位はがんで, 年間約32万人ががんで死亡する。全国の5年生存率は50%には届かず, 国はがん対策を推進させ20%アップを目指している。乳がん, 前立腺がんのようによく治るがん, 肺がん, 膵がんと食道がんのように極めて治りにくいがん, 中間の胃がんや大腸がんという3群に分かれるが, 肺がん, 膵がん, 食道がんのような難治がんの治療成績向上を図ることが不可欠となる。
膵臓は後腹膜に位置し, 早期の膵がんは症状発現が極めて乏しく, その上1cm以下という腫瘍径で治療しても5年生存率は60%に届かない。したがって, より早期の膵がんを発見するには, 高危険群を設定して検診を行って超早期の膵がん発見に努めなければならない。大阪府立成人病センターでは膵管拡張, 膵のう胞の存在は膵がんの高危険群であることをつきとめ, この高危険群に膵がん検診を実施し約9倍の確率で膵がんを診断している。また, 小さい膵がんは高頻度に膵液細胞診が陽性になることを見つけ, 膵液にがん細胞が陽性であるが, 腫瘤形成のないin situの時期に手術した症例は全例生存している。
一方, 食道がんの手術も頚部郭清, 開胸, 開腹という大きな手術を要し, がんが粘膜下にまで及ぶと生存率も著明な低下を示す。したがって, 粘膜内に留まる食道がんを発見するには内視鏡検査が必要になる。最近, 内視鏡検査でがんとdysplasiaを鑑別することが可能となっており, 早期の食道がんと診断がつけばEMRESDにて切除することが可能となっており, QOLが極めて良い根治治療が得られる。
したがって, 効率よく早期のがんを診断できる検診法を開発すれば, 小さな浸襲にて根治治療を行うことが可能になり, 快適な生活を営めるようになる。
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© 日本総合健診医学会
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