抄録
2022年に静岡県牧之原市で発生した幼稚園送迎バス置き去り死亡事故の後、2023年4月には園児の所在確認の徹底と安全装置の設置が義務化された。これにより、送迎バスの安全性は一定程度向上したものと考えられるが、運転手や同乗者の資質や研修等に関する義務は定められていない。また、座席ベルトの設置については、2013年の国土交通省車両安全対策検討会によるガイドラインで方向性が示されたものの、義務化には至っていない。そこで、幼稚園及び認定こども園を対象に調査を実施したところ、運行マニュアルの作成は進んでいるものの、運転手への研修機会の提供や座席ベルトの設置は十分に進んでいない現状が伺えた。また、運転手の非常勤化、高齢化による問題や有効な座席ベルトの開発や公費による費用補助の必要性など、今後送迎バスの安全性の向上に向けた多くの課題が明らかとなった。