抄録
拡大電子スコープを用いたpit pattern診断が,大腸病変の質的診断に有用であることが,幾多の変遷を経て認められるようになってきた.拡大電子スコープも第三世代となり,操作性も向上してルーチン検査で問題なく使用できるようになった.多くのcolonoscopistにその有用性を体験していただき,"森を見て木を見て,もう一度森を見る"という,通常観察との組み合わせでpit pattern観察を行う内視鏡診断学を,日常の検査に応用していただきたい. 消化管におけるファイバースコープを用いた拡大内視鏡観察は,1970年代から始まったが,本格的に臨床応用されだしたのは1990年以降である.先達の研究が基本になって,Kudoらによるpit pattern分類ができあがり病理組織学的裏付けも得られた. Pit pattern分類を,1~V型という名称で用いるようになり,癌で認められるV型pit patternの亜分類も"箱根合意によるV型pit patternの亜分類"として統一された. このpit pattern分類により,腫瘍径や形態によって若干の例外を認めるものの,拡大電子スコープを用いて95.2%という予想病理組織正診率が得られることから,pit pattern診断は病理組織診断を良く反映した,有用な客観的内視鏡診断学であることがわかる.