抄録
胆管上皮に沿って総肝管にまでおよぶ広範な進展を示した乳頭部癌の1例を経験したので報告する. 患者は59歳の男性で,全身の掻痒感を主訴に近医を受診し,黄疸・肝機能障害を指摘され当科に紹介入院となった.入院時,眼球結膜および皮膚に黄疸を認めた.入院時臨床検査成績では総ビリルビンが9.5mg/dlで,肝機能障害,胆道系酵素の上昇,血中・尿中アミラーゼの高値を認めた.US・CTで胆管および膵管の拡張が指摘された.内視鏡的にVater氏乳頭は口側隆起が著明に腫大していたが,開口部の表面性状には異常を認めなかった.ERCPを行うと,主膵管は数珠状に拡張し,胆管は特に肝外胆管の拡張が著明であった.総胆管末端は狭窄し壁不整像を認めた.これより上流の胆管の辺縁像には異常は指摘し得なかった.ESTを施行後生検を行い,EBDにより減黄を計った.生検標本で癌と診断され,小乳頭部癌の術前診断で膵頭十二指腸切除術を施行した.胆管は乳頭から約8cm肝側の総肝管のレベルで切離された.病理組織学的には乳頭管状腺癌で,主腫瘤はAcに主座を持ち,1.5×1.5×0.5cmの大きさであったが,癌は主腫瘤から胆管上流に向かい固定標本上約65mmにわたって胆管上皮を置換するような形で進展していた.