抄録
ゾンデ式小腸ファイバースコープを用いて,過去15年間に15名(男性9名,女性6名)のクローン病患者の診断と経過観察を行った.15例のべ28回のゾンデ式小腸ファイバースコープ検査で24回(85.7%)は目的部位までスコープを挿入し,内視鏡観察を行うことができた.15例中13例は小腸病変の存在が確認されたが,2例は病変は大腸にのみ存在した.本症に特徴的な内視鏡所見は縦走潰瘍,輪状潰瘍,不整形潰瘍,aphthoid ulcer,cobble-stone像,炎症性ポリープ,偽憩室,狭窄であったが,微細病変の診断については内視鏡検査がX線検査より優れていたが,偽憩室の診断はX線検査が優れていた. 経過観察例において増悪と改善を繰り返し,病変範囲の進展がみられたが,aphthoid ulcerが縦走潰瘍にまで進展する経過を確認できた例はなかった. 本症の経過観察・診断において,内視鏡検査はX線被爆のおそれが少く,特に経鼻的に検査を行うことができる器種はtotal enteroscopyが可能であり,本症の小腸病変の観察に有用であることが強調される.