抄録
症例は40歳男性で,胃集検にて石灰化を伴う上腹部腫瘤を指摘され来院した.腹部に腫瘤は触れず,単純写真で左上腹部に70×50mmの結節状石灰化像がみられた.胃X線検査によりこの石灰化像は胃体中部の胃外性腫瘤によるものと判明した.内視鏡検査では同部の粘膜面は数個の隆起が集合していたが・胃内腔への腫瘤の突出はほとんどなく,色調の変化や出血,潰瘍形成などもみられなかった.生検では正常粘膜のみであった.非上皮性胃腫瘍の診断で,悪性の可能性も考え手術を行った.胃体部後壁に胃外性に発育した灰白色手拳大の硬い腫瘤がみられたが,周囲への浸潤やリンパ節腫脹などはなく,胃切除を行った.病理組織所見は固有筋層に発生し,広範な石灰化を伴った胃平滑筋腫であった.胃外性に発育した粘膜下腫瘍の診断は困難なことが少なくない.本例は著明な石灰化を伴った稀な例であり,存在自体は容易に診断できた.診断上有意義と思われたので紹介する.