日本消化器内視鏡学会雑誌
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好酸球性腹水を伴った好酸球性胃腸炎の2例
折居 正之狩野 敦渡辺 英裕高橋 真阿部 弘一斎藤 裕角田 佐波子班目 健夫吉田 俊巳佐藤 俊一小豆島 正博
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1989 年 31 巻 1 号 p. 116-122_1

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抄録
 好酸球性腹水を伴った好酸球性胃腸炎の2例を経験したので報告する. 症例1は27歳の女性で,既往には寒冷蕁麻疹や胃炎があり,出産後心窩部痛,悪心,下痢が出現した.受診時には腹水がみられ,末梢血検査で白血球39,200(好酸球79%)の異常がみられ入院した.腹水穿刺液は滲出液で多数の好酸球がみられた.胃内視鏡検査では胃角部と体下部に点状および斑状の発赤がみられ,腹腔鏡検査でも胃と小腸の漿膜に発赤がみられた.胃粘膜の生検組織には多数の好酸球浸潤がみとめられた.プレドニンを投与したところ,腹水は消失し自覚症状も改善した.症例2は37歳の女性で,既往に誘因不明の蕁麻疹,便通異常があり腹痛を主訴として来院した.受診時腹水がみられ腹水中に多数の好酸球をみとめ,末梢血検査では白血球数は正常であったが好酸球が11.1%と増加していた.内視鏡検査で胃,十二指腸粘膜に異常はみられなかったが,生検組織には多数の好酸球がみられた.保存的に経過をみていたところ,腹水は消失し自覚症状も改善した. 本症の診断は,アレルギーの既往歴,自覚症状,末梢血中,腹水中および消化管粘膜生検組織標本における好酸球増多などによって比較的容易であるが,腹腔鏡による漿膜の観察も有用であった.また,治療は必ずしもステロイド剤の投与は必要でなく,症例によっては自然に軽快するものもあると考えられた.
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