抄録
山口大学第1内科において,1987年1月から同年10月までに施行したERCPのうち,ERC所見がえられた症例221例中28例(12.7%)が胆嚢不影で,二重造影ができていた症例は221例中68例(30.8%)であった.そこで,胆嚢不影例の精査ならびに胆嚢隆起性病変の精査の目的で,ダブルバルーンカテーテルを新しく開発し,それを用いた胆嚢精査法を考案した.ダブルバルーンカテーテル法による胆嚢精査を,ERCPによる胆嚢不影症例7例,胆嚢隆起性病変3例について施行したところ,胆嚢不影例7例の全例の胆嚢が造影され,胆嚢隆起性病変3例中2例に病変の形態および性状をより明瞭に描出しえた.本論文において,ダブルバルーンカテーテル法の手技を詳述し,さらに症例を呈示してその臨床的意義について検討を加えた.結論として,ダブルバルーンカテーテル法は胆嚢が選択的に造影でき,ERCで胆嚢不影の症例における胆嚢造影や胆嚢隆起性病変の質的診断法として有用であることを強調した.