抄録
胃の腸上皮化生の診断のための内視鏡的メチレンブルー染色法と,生検標本と手術標本についてのLAP染色,ALP染色,A.B.染色の関連性を明らかにするために,内視鏡的メチレンブルー染色後に,染色部をstrip biopsyにより切除したのちにLAP染色,ALP染色,A.B.染色を行い,それぞれの染色状態を実体顕微鏡下にて観察し比較検討した.さらに,その関連性を刷子縁および細胞内粘液から検討するため,PAS,A.B.重染色を行った.その結果,A.B.染色法において,最も広範囲に腸上皮化生粘膜が杯細胞化生として認められた.また,M.B.吸収領域は,LAP,ALP陽性領域よりもやや広い範囲に認められ,M.B.吸収能はmicrovilliがPAS陽性刷子縁として識別される以前に出現し,LAP,ALP酵素活性はPAS陽性刷子縁が識別される時期になってはじめて酵素活性をもつようになった.また,これら腸上皮化生粘膜の胃内分布は,酵素学的,粘液学的に完全型の腸上皮化生粘膜が,中間帯の胃粘膜に多く認められ,粘液組織学的に完全な吸収上皮だけからなる腸上皮化生粘膜も中間帯粘膜に認められた.