日本消化器内視鏡学会雑誌
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細胞動態からみた胃潰瘍治癒過程の検討
坂上 博水上 祐治平林 靖士柴田 洋山下 省吾太田 康幸
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1987 年 29 巻 5 号 p. 867-872_1

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抄録
 胃潰瘍の治癒過程を,3H-thymidine autoradiographyによる潰瘍辺縁粘膜の細胞動態面から観察し,さらに,ヒスタミンH2受容体拮抗剤使用の有無による細胞動態の変化について検討した.標識細胞数/胃粘膜上皮細胞数比より求めた標識率は,内視鏡stageでは,S2期に比較してA2~H2期で有意に高値であり,S1期で高値傾向であった.組織分類別では,H3tufty(-)に比較してH2,H3 tufty(+)の時期で有意に高値であった.また,難治性潰瘍においても標識率は高値を示した.H2受容体拮抗剤使用の有無による標識率の差違については,内視鏡的にH1・H2 stage, S1 stage例のいずれにおいても,使用,非使用例で標識率の差はみられなかった.以上の成績より,潰瘍治癒は,内視鏡stageでS2,組織的にはH3 tufty(-)の時期と考えるのが妥当であり,H2受容体拮抗剤の使用によって潰瘍再生粘膜の細胞動態には変化をきたさないものと考えられた.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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