抄録
われわれは難治性胃潰瘍で心疾患および腎障害の合併のため外科より手術を拒否された患者にcimetidineを投与した.胃潰瘍は速かに瘢痕治癒に至ったが,その後の再発予防のためにcimetidineを減量しつつ内視鏡検査および血液生化学検査を毎月おこない2年間を経過した.内視鏡検査毎にcrystal violet色素法を行ない胃粘膜表面のpHを定性的に観察し,その呈色および機能的腺境界の位置によりcimetidineの投与量を変更した.その結果,呈色により示される機能的腺境界はcimetidineの投与量に依存して変化することを発見した.この症例では機能的腺境界を胃潰瘍部位より噴門側に移動させるcimetidineの投与量で再発を予防し400mg/dayで充分であった. cimetidineの長期投与および機能的内視鏡検査法を臨床治療に応用した最初の症例と考えるので観察経過を報告する.