2025 年 67 巻 7 号 p. 1300-1311
【目的】大腸神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor:NET)の発生率は大腸がん検診プログラムの実施や大腸内視鏡検査件数の増加に伴って増加している.近年,大腸NETの治療は,根治手術から内視鏡切除へと移行している.本研究は,大腸NETに対する内視鏡的切除法別の短期成績を評価することを目的とした.
【方法】大腸NET STUDYに登録された患者のうち,初回治療として内視鏡治療を受けた患者を対象とした.一括切除率,R0(断端陰性一括切除)切除率など短期成績を治療法別に解析した.
【結果】患者472例477病変が内視鏡治療を受け,このうち418例421病変が解析対象となった.患者の年齢中央値は55歳,性別は男性が56.9%であった.部位は下部直腸(Rb)が88.6%と最も多く,10mm未満の病変が87%を占めていた.治療法はESMR-L(endoscopic submucosal resection with a ligation device)が56.6%と最も多く,次いでESDが31.4%,EMR-C(endoscopic mucosal resection using a cap-fitted endoscope)が8.5%であった.10mm未満のR0切除率はESMR-L,ESD,EMR-Cでそれぞれ95.5%,94.8%,94.3%であった.偶発症は16例(3.8%)で発生し,全例保存的治療が可能であった.不完全切除は23例(5.5%)あったが臨床病理学的リスク因子は示されなかった.
【結論】ESMR-L,ESD,EMR-Cは,10mm未満の大腸NETに対する治療法として同等の有効性と安全性を示した(UMIN000025215).