抄録
光学応答や磁気特性から注目される有機金属ユウロピウム(Eu)サンドイッチクラスターに対して、銀(Ag)電極薄膜下に埋もれたクラスターの化学結合状態を観測することを目的として、8 keVの励起X線エネルギーによる硬X線光電子分光を行った。Agの内殻準位は観測されたものの、Euの内殻準位を観測できなかった。このAg膜厚(20 nm)において、Ag電極薄膜下のEuサンドイッチクラスター由来の光電子信号は得られるはずであることから、X線照射下において酸化数や配位環境の異なる中間生成物が発生してしまい十分な積算とならなかったことがEu由来の信号をバックグラウンドに埋もれさせた要因であると考えられる。