抄録
硫化水素ハイドレートは、水分子が作るカゴ構造に、ゲスト分子として硫化水素を内包した化合物である。硫化水素は極性が強いことから、水分子との相互作用により、カゴ構造内のゲスト分子の偏心が期待される。その詳細を調べるために結晶構造解析が必要となるが、非常に毒性が高いため、分解して硫化水素が発生した場合を考慮すると、実験室系X線回折装置を使うことは不可能である。今回 BL15XU の高分解能粉末X線回折装置を用いて微量の試料の測定を行い、結晶構造の解析を行った。その結果、硫黄原子は、水分子が作るカゴ構造の中心付近に位置しているが、若干の偏心が示唆された。