2025 年 27 巻 1 号 p. 53-63
近年,Advanced Therapy Medicinal Products(ATMPs)が実用化されつつある。一方でATMPsがこれまでの無菌医薬品と大きく異なる点の一つとして,患者への投与までの時間が数日と非常に短い製品もしばしば存在する点である。このような製品については迅速な微生物検査が求められている一方で,従来の培養を用いた無菌試験では結果が得られるまで約2週間もの時間がかかり,患者への安全性の観点でも特に大きな課題である。
本稿では,ATMPsでの微生物管理に関してPIC/Sや日米欧の規制動向と,現状の課題を紹介する。さらに,ATMPsの無菌試験に対して先進的な微生物迅速試験法(RMM:Rapid Microbiological Method)の適用の可能性について検討した内容を報告する。本研究では1生菌レベルのATPを直接測定が可能な「高感度ATP法」という先進的なRMMの使用を検討した。ATP法の課題は細胞由来のATPによるバックグラウンドノイズであるが,「前培養法」や「細胞除去法」といった適切な各種前処理方法と組み合わせることで,数時間~数日という短時間で無菌試験の結果が得られる可能性が示唆された。