2024 年 24 巻 3 号 p. 101-109
フレキシブルデバイスの実用化に伴い,柔軟な熱伝導性コンポジットの需要が高まっている。しかし一般的に柔軟性や強靭性といった機械的特性と熱伝導性はトレードオフの関係になるケースが多く,それらの特性を高水準で両立するコンポジットの開発は困難である。本稿ではこの課題を解決するアプローチとして,環動高分子を用いた可動架橋ネットワークとプラズマ表面改質によるフィラー分散を活用したコンポジット開発について概説する。フィラーの均一分散と組み合わせることで強く発揮される可動架橋点の滑車効果は,フィラー周辺での応力集中を緩和することで脆化の抑制が期待でき,両者の組み合わせによって柔軟性と強靭性を両立したコンポジット“タフコンポジット”が開発された。さらにフィラー電界配向による熱伝導パス形成とも組み合わせた,金属材料並みの高熱伝導性とゴム材料並みの柔軟性を持つタフコンポジット開発についても本稿にて紹介する。