抄録
高分子電解質の対イオン凝縮の概念の起源と歴史的な展開を述べるとともに,凝縮した対イオンの微視的状態について,二,三の例を紹介した。その際,この概念が棒状形態の高分子イオンに特徴的なものであることを強調した。添加塩系の相加律についても紹介した。動電現象としては,高分子電解質の電気泳動を取り上げ,素抜け挙動の簡単な解説と,対イオン凝縮に関係する特徴的な現象として,対イオンの負の化学量論的輸率と移動度の飽和効果を解説した。最後に,いろいろな形態のコロイドイオンの場合に,対イオン凝縮の概念を拡張することを議論した。まとめとして,対イオン凝縮の操作的定義を三種類提案した。