抄録
MU3寒天培地を用いて日本でVCMが適用になった1991年から1998年に臨床分離したMRSAについて, ヘテロVRSAの検出を行いその年次推移およびその菌の性状を検討した. 978株のうちVRSAは検出されず, ヘテロVRSAは23株 (24%) であった. また, 年次推移による増加傾向は見られず, 検出率はほぼ横ばいであった. ヘテロVRSAのVCMのMICは1-2μg/mlに分布し, TEICのMICは0.5-12μg/mlであった. ポピュレーション解析では全てヘテロパターンを示した. コアグラーゼ型別, TSST-1, エンテロトキシンの産生はコアグラーゼII型・TSST1陽性・エンテロトキシンC型産生が43%ともっとも多かったが, 多様なパターンであった. PFGEでの遺伝子解析では2株ずつの組み合わせで4組は同一パターンを示したが, 全体的には多様なパターンであった. hetero-VRSAは1991年から存在し, その出現にはバンコマイシンと作用機序の異なる細胞壁合成阻害剤であるβ-ラクタム剤の使用の関与が考えられる.