抄録
第3世代のセフェム系抗生剤の内, 胆汁排泄型であるセフォペラゾン (CPZ) を生後3ヵ月より17歳迄の小児の各種感染症に投与し, 腸内細菌叢へ及ぼす影響並びに下痢発症頻度について検討した.
下痢発症頻度は58例中15例で, 25.8%であった. 何れも4歳以下に発症し, 特に2歳以下の乳幼児では27例中11例 (40.7%) と高頻度であった. 下痢発症例では糞便中の総菌数の減少が著明で, Candida, 腸球菌群以外のほとんどの菌が減少し, 他の第3世代セフェム系抗生剤とほぼ同様な傾向であった. 一方下痢を発症しなかった例では腸球菌群が増加傾向を示した. この結果に注目し, CPZ投与時の多剤耐性フェーカリス菌製剤 (BF-R) の併用効果を検討した. 2歳以下を対象としたが, BF-R併用群の下痢発症頻度は25例中2例 (8.0%) で, 非併用群に比し有意に減少した (p<0.01).
2歳以下の小児に対するCPZの投与は, 腸内細菌叢の変動, 下痢の併発等に注意し慎重に行なうことが望ましく, CPZ投与時の下痢発症予防には, BF-Rの併用が有効であると考えられた.