感染症学雑誌
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症例
成人T細胞白血病・リンパ腫に対する同種造血幹細胞移植直後に顕在化した播種性Lomentospora prolificans感染症
生成 諒田中 康博大路 剛薬師神 公和田代 敬常峰 紘子有馬 靖佳
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2025 年 99 巻 4 号 p. 332-338

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抄録

患者は70歳の女性で,Mycobacterium aviumによる非結核性抗酸菌症(nontuberculous mycobacterium,NTM)に対し治療を行っていた.白血球数の異常な増加を認め,成人T細胞白血病・リンパ腫(adult T-cell leukemia/lymphoma,ATLL)と診断し,真菌感染症予防のためにミカファンギンの投与を行い,同種造血幹細胞移植を実施した.移植後9日目から発熱が持続し,移植後14日目の血液培養からLomentospora prolificansが同定された.ボリコナゾールやテルビナフィンなどの抗真菌薬を投与したが移植後33日目に死亡し,剖検を行った.

L. prolificansは血液悪性腫瘍や造血幹細胞移植,固形臓器移植のレシピエントなど重度の免疫抑制患者において感染のリスクが高くなることが知られている.L. prolificans感染症は稀であり,ほとんどの抗真菌薬に対して耐性を示すことが多く,治療は困難を極める.

NTMを伴うL. prolificans感染症の症例は限られているが,肺の空洞性病変の存在がL. prolificans感染症のリスク因子であることが示唆されている.我々が検索する限り,ATLLに関連するL. prolificans感染症の症例はこれまで報告されていない.NTMの患者では,重度の免疫抑制状態となった場合,特に造血幹細胞移植後などではL. prolificans感染に注意を払うべきである.また,L. prolificans感染症に対する効果的な治療プロトコルの開発と標準化には今後さらなる研究が必要である.

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© 2025 一般社団法人 日本感染症学会
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