The Journal of the Japan Society for Respiratory Care and Rehabilitation
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Original Articles
Survey of nursing practice and learning needs of nurses specializing in respiratory care of Japanese patients with idiopathic pulmonary fibrosis
Yasuko Igai
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2023 Volume 32 Issue 1 Pages 67-77

Details
要旨

【目的】本研究の目的は,慢性呼吸器疾患看護認定看護師および慢性疾患看護専門看護師を対象に特発性肺線維症療養者への看護援助の実態と教育的ニーズを調査し課題を明示することである.

【方法】272人を対象に(1)属性,(2)看護実践(34項目)の有無,(3)看護実践の自由記載,(4)プログラムの必要性の程度28問,(5)教育上の課題8問,(6)看護師教育の自由記載を問う無記名自記式質問紙調査を2020年9~12月に実施した.

【結果】134件を分析し,看護実践は21.4±7.4項目(実践率62.9%)であった.在宅酸素療法では全項目で8割以上実践され,診断時では6割以下であった.実践には対象者の配置場所,呼吸器看護外来,関わった機会の程度が関与していた.教育プログラムの必要性の程度では9問で「大いに必要」と6割以上が答え,教育上の課題では教育できる人材がいないと答えた.

【結論】看護実践率は,在宅酸素療法で高く診断時で低い.看護体制の構築と看護師の育成が必要である.

緒言

特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis; IPF)は進行性の難病1である.5年生存率は20~40%2と肺がんの5年相対生存率の47.5%に匹敵する予後不良の疾患であり,病状の進行に伴い生活に高流量の酸素吸入を要する.同じく慢性呼吸器疾患の慢性閉塞性肺疾患に比べ,IPFは原因不明で予後不良,かつ治療法やケアが未確立のため,援助の手立ては少ない現状にある3.心身の症状と苦痛は人々の尊厳を失わせることに関連し4,IPF療養者は尊厳が脅かされやすいと考えられる.疾患修飾管理が行われるが,症状の管理薬剤が少なく生活の質は低い5

IPF療養者の生活の質の維持には,多職種による協働した援助が必要であり6,経過を予測して生活を援助する看護師への期待は大きい7.しかしながら,看護の実態に関する報告は未だみあたらない.IPF療養者の生活の質の維持を支援する看護実践者の育成は喫緊の課題であり,予後予測が困難8かつ有効なケアのエビデンスが少ないため1,慢性閉塞性肺疾患や肺がんへの看護とは異なるコンピテンシーが必要と考えられる.ところが,看護師が何を学びたいのかという教育的ニーズはよくわかっておらず,IPF療養者の特性に基づく看護を体系的に学習できる教材は,現在のところみあたらない.

IPF療養者への援助の機会が多いのは,呼吸器疾患看護を専門とする慢性呼吸器疾患看護認定看護師および呼吸器疾患をサブスペシャリティとする慢性疾患看護専門看護師と考えられる.そこで,これらの資格をもつ看護師を対象に,看護援助の実態と教育的ニーズの調査により課題を明示し,看護師育成プログラムの作成資料とすることを目的に本研究を実施した.

対象と方法

1. 研究デザイン

アンケートを用いた質問紙調査

2. 研究対象者

2020年6月現在,日本看護協会に登録している慢性呼吸器疾患看護認定看護師262人と,慢性疾患看護専門看護師(サブスペシャリティが呼吸器疾患)10人の合計272人とした.所属が他疾患専門治療施設の者は除外した.

3. データ収集方法

対象者宛てに依頼文と無記名自記式質問紙各1部を郵送し,回答は郵送またはweb回答を選択する方法とした.調査項目は,(1)属性,(2)看護実践の有無34問(看護実践全般20問,診断時の看護4問,抗線維化薬への看護3問,在宅酸素療法への看護4問,急性増悪後の看護3問),(3)看護実践の自由記載,(4)看護師育成プログラムに含む必要性の程度(疾患概論5問,生活者の特性理解2問,看護17問,演習4問の合計28問),(5)教育上の課題と思う程度8問,(6)看護師教育の自由記載,とした.

調査項目(1)の属性では,IPF療養者に関わった機会の程度について5段階で回答を求め,関わった機会が多い群は,「関わることが多かった」,「比較的多かった」の合計とし,関わった機会の少ない群は,「どちらともいえない」,「関わることがあまりなかった」,「なかった」を合計した.調査項目(2),(4)は,IPF療養者と家族へのケア・モデル9,10,11,12,IPF療養者に関わる医療専門職の育成に関する文献レビューで採択された2研究13,14,ならびにナースプラクティショナーによる総説15を参考に作成した.さらに,新型コロナウイルス感染症による対面機会の減少という背景から遠隔看護を追加した.演習項目は,IPF療養者の療養体験3から援助が必要と考えられる4項目を挙げた.調査項目の(4),(5)は「大いに必要(課題)である」,「必要(課題)である」,「あまり必要(課題)ではない」,「全く必要(課題)ではない」の4段階リッカート尺度で回答を求めた.

4. データ収集期間

2020年9月18日~12月31日

5. データ分析方法

データ分析方法は,1)記述統計,2)看護実践と属性とのカイ二乗検定,3)看護実践項目を従属変数,対象者の属性を独立変数とするロジスティック回帰分析,4)自由記載(看護実践,看護師教育)を内容分析,5)看護師育成プログラムに含む必要性の程度を従属変数,対象者の背景を独立変数とする重回帰分析とした. 6)有意水準はp<0.05とし,分析にはSPSS ver. 27,Nvivo ver. 13を用いた.

6. 倫理的配慮

回答への協力は任意かつ無記名とし,所属を特定できる情報は一切収集せず,回答に伴うWeb通信料の負担を依頼文に明記した.所属の研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:20-A032).

結果

1. 回答者の背景(表1

144件の回答を得た(回収率49.3%).有効回答134件(有効回答率93.1%)を分析対象とした.資格の内訳は,慢性呼吸器疾患看護認定看護師129人,慢性疾患看護専門看護師5人(両資格保持1人)であり,3学会合同呼吸療法認定士65.7%,呼吸ケア指導士12.7%であった.年齢は40歳代が50%,女性が78%で,経験年数10年以上20年未満,20年以上30年未満で90%を占めていた.対象者の配置場所は,外来(救急外来含む)25人(18.7%),病棟(ICU,救急病棟含む)84人(62.7%),専従11人(8.2%)であった.設置主体は,公立病院が25%で最も多く,所在地域は,関東27%,中部25%と続いた.専門性では,呼吸器看護外来の設置41%,呼吸器センターの設置24%であった.IPF療養者に関わった機会の程度は,「多い」,「比較的多い」が90人(67.2%)で,看護介入を必要とする時期は,「診断時から」が119人(88.8%)であった.

表1 回答者の概要(n=134)

項目回答n(%)
資格
慢性呼吸器疾患看護認定看護師129(96.2)
慢性疾患看護専門看護師5( 3.7)
専門看護師・認定看護師両資格保持1( 0.1)
3学会合同呼吸療法認定士88(65.7)
呼吸ケア指導士17(12.7)
年齢
30歳代40(29.9)
40歳代67(50.0)
50歳代26(19.4)
60歳以上1( 0.7)
性別
男性30(22.4)
女性104(77.6)
看護師経験年数
5年以上10年未満1( 0.7)
10年以上20年未満69(51.5)
20年以上30年未満54(40.3)
30年以上10( 7.5)
現在の配置場所
外来(救急外来含む)25(18.7)
病棟(ICU,救急病棟含む)84(62.7)
外来・病棟兼任2( 1.5)
訪問看護ステーション8( 6.0)
地域連携室3( 2.2)
看護部付専従11( 8.2)
教育機関1( 0.7)
設置主体
国立病院機構・高度医療研究センター16(11.9)
国立大学病院10( 7.5)
独立行政法人(労災病院・JCHO病院)7( 5.2)
都道府県・市町村・地方独立行政法人33(24.6)
日本赤十字社・済生会・厚生連等25(18.7)
医療法人12( 9.0)
社会医療法人・特定医療法人11( 8.2)
学校法人7( 5.2)
その他(公益財団法人等)13( 9.7)
施設所在地域
北海道・東北15(11.2)
関東36(26.9)
中部34(25.4)
近畿24(17.9)
中国・四国13( 9.7)
九州12( 8.9)
呼吸器看護外来の有無
あり55(41.0)
なし79(59.0)
他領域の看護外来の有無
あり102(76.1)
なし32(23.9)
呼吸器センターの有無
あり32(23.9)
なし102(76.1)
IPF療養者に関わった機会の程度
関わることが多かった38(28.4)
関わることが比較的多かった52(38.8)
どちらともいえない27(20.2)
関わることがあまりなかった16(11.9)
関わることがなかった1( 0.7)
看護援助の開始時期はいつからが良いか
診断時から119(88.8)
抗線維化薬の内服開始から11( 8.2)
在宅酸素療法導入後から2(11.5)
急性増悪後から2( 1.5)
稀少難病であり必要とは思わない0( 0)

IPF, idiopathic pulmonary fibrosis; ICU, intensive care unit

回収率49.3%(144件),有効回答率93.1%(134件)

2. IPF療養者と家族への看護援助(図1

看護実践34項目中,実践している項目数の平均値は,21.4±7.4項目(実践率62.9%)であった.80%以上実践されていた項目は,看護実践全般7項目,在宅酸素療法4項目すべて,急性増悪後2項目であった.診断時の看護は4項目すべてで60%以下,「抗線維化薬の導入・中止への意思決定支援」は35.1%,看護実践34項目中11項目で実践が50%を下回っていた.

図1 IPF療養者(家族含む)への看護援助

3. 看護実践と対象者の属性とのカイ二乗検定(表2

「家族の病状の受け止めの傾聴」では看護師経験年数「20年以上30年未満」,「抗線維化薬内服管理・モニタリング」では性別で有意差を認めた.「外来受診(訪問)時の30分以内の面談」,「情報収集に関すること(インターネットの情報の正確性について)」では,対象者の配置場所の「外来」で有意差を認めた.「外来受診(訪問)時の30分以内の面談」,「外来受診(訪問)時の30分以上の在宅療養支援」は「病棟」と,「外来受診(訪問)時の30分以内の面談」,「外来受診(訪問)時の30分以上の在宅療養支援」,「退院前自宅訪問」,「情報収集に関すること」は「専従」とで有意差を認めた.

「外来受診(訪問)時の30分以内の面談」,「外来受診(訪問)時の30分以上の在宅療養支援」,「アドバンス・ケア・プランニング」,「退院前自宅訪問」,「患者会の紹介・実施」,「情報収集に関すること」は,「呼吸器看護外来の有無」とで有意差を認めた.「抗線維化薬内服管理・モニタリング」では,「呼吸器センターの有無」とで有意差を認めた.

「外来受診(訪問)時の30分以内の面談」と「外来受診(訪問時)の30分以上の在宅療養支援」,「生活状況(仕事・家事)の聴取」,「緩和ケアの検討・コンサルト」,「救急外来受診の目安」,「情報収集に関することの援助」,「検査説明(肺生検を除く)」,「抗線維化薬の内服管理」,「急性増悪後の療養支援」では,IPF療養者に関わった機会の程度が「多かった」とで有意差を認めた.「緩和ケアの検討・コンサルト」,「救急外来受診の目安」では関わった機会の程度が「比較的多かった」とで,「抗線維化薬内服管理・モニタリング」では「どちらともいえない」とで有意差を認めた.

表2 看護実践と対象者の属性との関連

属性I.看護実践全般に関すること
外来(訪問)時
30分以内の面談
外来(訪問)時30分
以上の在宅療養支援
生活状況(仕事・
家事)の聴取
日常生活動作
(呼吸リハビリ)
感染予防行動・
予防接種
緩和ケアの検討・
コンサルト
アドバンスケア
プランニング
救急外来受診の
目安について
退院前自宅訪問家族の病状の
受け止めの傾聴
在宅医療資源との
連携(文書/電話等)
n=134n=134n=134n=134n=134n=134n=134n=134n=134n=134n=134
実施
(件)
p実施
(件)
p実施
(件)
p実施
(件)
p実施
(件)
p実施
(件)
p実施
(件)
p実施
(件)
p実施
(件)
p実施
(件)
p実施
(件)
p
看護師経験年数.513.119.588.647.455.696.836.558.677.014*.510
5年以上10年未満00.0%00.0%10.7%10.7%10.7%00.0%00.0%10.7%00.0%00.0%10.7%
10年以上20年未満2720.1%1712.7%6145.5%6246.3%5641.8%2518.7%2921.6%5238.8%118.2%4634.3%4835.8%
20年以上30年未満2317.2%1813.4%4634.3%4735.1%4936.6%2216.4%2417.9%4634.3%139.7%4634.3%3324.6%
30年以上64.5%64.5%107.5%107.5%96.7%53.7%43.0%86.0%21.5%53.7%86.0%
性別.057.365.558.103.261.115.312.253.208.165
男性86.0%96.7%2518.7%2619.4%2317.2%96.7%96.7%2216.4%86.0%1914.2%1712.7%
女性4835.8%3223.9%9369.4%9470.1%9268.7%4332.1%4835.8%8563.4%1813.4%7858.2%7354.5%
対象者の現在の配置場所<.001***<.001***.411.559.602.054.463.583.002**.416.392
外来(救急外来含む)1813.4%107.5%2014.9%2115.7%2014.9%53.7%96.7%1914.2%43.0%1410.4%1511.2%
病棟(ICU,救急病棟含む)2115.7%1712.7%7354.5%7455.2%7153.0%3727.6%3626.9%6649.3%1410.4%6347.0%5541.0%
訪問看護53.7%10.7%86.0%86.0%75.2%10.7%32.2%64.5%00.0%75.2%64.5%
地域連携室21.5%10.7%43.0%43.0%43.0%10.7%10.7%32.2%00.0%32.2%21.5%
専従(外来・病棟兼任含む)107.5%118.2%129.0%129.0%129.0%75.2%86.0%129.0%75.2%96.7%118.2%
教育機関他00.0%10.7%10.7%10.7%10.7%10.7%00.0%10.7%10.7%10.7%10.7%
呼吸器看護外来の有無<.001***<.001***.759.115.056.398.019*.074.018*.211.692
あり3727.6%3425.4%4936.6%5238.8%5138.1%1914.2%3022.4%4835.8%1611.9%4332.1%3828.4%
なし1914.2%75.2%6951.5%6850.7%6447.8%3324.6%2720.1%5944.0%107.5%5440.3%5238.8%
呼吸器センターの有無.281.1580.0%.255.3740.0%.396.862.072.821.915.941.827
あり1611.9%139.7%3022.4%3022.4%2820.9%129.0%1813.4%2619.4%64.5%2317.2%2216.4%
なし4029.9%2820.9%8865.7%9067.2%8966.4%4029.9%3929.1%8160.4%2014.9%7455.2%6850.7%
IPF療養者に関わった機会の程度.017*.006**.01**.028**.015*.041*.470.013*.237.188.057
多かった2317.2%1914.2%3727.6%3626.9%3324.6%2216.4%2014.9%3526.1%75.2%2921.6%2417.9%
比較的多かった2014.9%1410.4%4533.6%4735.1%4533.6%1511.2%2014.9%3626.9%96.7%3727.6%3727.6%
どちらともいえない118.2%86.0%2417.9%2417.9%2619.4%118.2%129.0%2417.9%96.7%2216.4%2216.4%
あまりなかった21.5%00.0%129.0%139.7%118.2%43.0%53.7%129.0%10.7%96.7%75.2%
なかった00.0%00.0%00.0%00.0%00.0%00.0%00.0%00.0%00.0%00.0%00.0%
看護開始時期はいつが良いか.393.727.118.059.451.576.623.651.592.133.483
診断時から5138.1%3727.6%10779.9%10981.3%10376.9%8059.7%5238.8%9570.9%2518.7%8966.4%7858.2%
抗線維化薬開始から53.7%32.2%86.0%86.0%96.7%64.5%43.0%96.7%10.7%53.7%96.7%
在宅酸素療法導入から00.0%00.0%10.7%21.5%10.7%10.7%00.0%10.7%00.0%10.7%21.5%
急性増悪後から00.0%10.7%21.5%10.7%21.5%21.5%10.7%21.5%00.0%21.5%10.7%
属性I.看護実践全般に関することII.診断時に関する看護援助III.抗線維化薬導入に関する看護援助IV.在宅酸素療法に関する看護援助V.急性増悪後に関する看護援助
患者会の紹介・実施情報収集・情報の
正確性への支援
検査説明
(肺生検を除く)
肺生検の
意思決定支援
抗線維化薬内服管理・モニタリング医療費助成制度等の紹介・支援HOTの受け止めの
傾聴(本人と家族)
看護師・酸素業者
等への情報提供
急性増悪後の
受け止めへの援助
急性増悪後の
療養支援
急性増悪後の
家族への援助
n=134n=134n=134n=134n=134n=134n=134n=134n=134n=134n=134
実施
(件)
p実施
(件)
p実施
(件)
p実施
(件)
p実施
(件)
p実施
(件)
p実施
(件)
p実施
(件)
p実施
(件)
p実施
(件)
p実施
(件)
p
看護師経験年数.560.921.193.008**.757.397.611.911.959.232.910
5年以上10年未満00.0%00.0%10.7%10.7%10.7%10.7%10.7%10.7%10.7%10.7%10.7%
10年以上20年未満96.7%1712.7%1511.2%43.0%4634.3%3828.4%5641.8%5944.0%5843.3%5944.0%5339.6%
20年以上30年未満129.0%139.7%1813.4%53.7%3727.6%3123.1%4835.8%4835.8%4533.6%3929.1%4130.6%
30年以上21.5%32.2%32.2%10.7%86.0%86.0%96.7%96.7%86.0%96.7%75.2%
性別.238.768.740.246.040*.539.761.457.548.667.936
男性32.2%86.0%96.7%43.0%1611.9%1611.9%2518.7%2518.7%2417.9%2518.7%2317.2%
女性2014.9%2518.7%2820.9%75.2%7656.7%6246.3%8966.4%9268.7%8865.7%8361.9%7959.0%
対象者の現在の配置場所.243.005**.299.687.283.543.583.583.608.333.350
外来(救急外来含む)32.2%21.5%96.7%10.7%1813.4%1410.4%1914.2%2216.4%1914.2%1813.4%1712.7%
病棟(ICU,救急病棟含む)1410.4%2115.7%2417.9%86.0%5440.3%4735.1%7354.5%7253.7%7052.2%6649.3%6246.3%
訪問看護10.7%21.5%00.0%00.0%64.5%64.5%64.5%64.5%86.0%75.2%86.0%
地域連携室00.0%00.0%00.0%00.0%43.0%21.5%43.0%43.0%43.0%43.0%43.0%
専従(外来・病棟兼任含む)53.7%86.0%43.0%21.5%107.5%96.7%118.2%129.0%107.5%129.0%107.5%
教育機関他00.0%00.0%00.0%00.0%00.0%00.0%10.7%10.7%10.7%10.7%10.7%
呼吸器看護外来の有無.034*.009**.269.756.928.726.114.116.989.103.379
あり1410.4%2014.9%1813.4%53.7%3828.4%3324.6%5037.3%5138.1%4634.3%4835.8%4432.8%
なし96.7%139.7%1914.2%64.5%5440.3%4533.6%6447.8%6649.3%6649.3%6044.8%5843.3%
呼吸器センターの有無.059.319.059.080.028*.330.899.210.890.100.262
あり96.7%107.5%139.7%53.7%2720.1%2115.7%2720.1%3022.4%2720.1%2921.6%2216.4%
なし1410.4%2317.2%2417.9%64.5%6548.5%5742.5%8764.9%8764.9%8563.4%7959.0%8059.7%
IPF療養者に関わった機会の程度.158.024*<.001***.095<.001***.033*.040*.026*.022*.001**.025*
多かった107.5%1511.2%2014.9%75.2%3324.6%2921.6%3425.4%3626.9%3324.6%3526.1%3123.1%
比較的多かった107.5%107.5%139.7%32.2%3929.1%3022.4%4533.6%4533.6%4533.6%4130.6%4332.1%
どちらともいえない32.2%86.0%43.0%10.7%139.7%139.7%2417.9%2417.9%2417.9%2417.9%2014.9%
あまりなかった00.0%00.0%00.0%00.0%75.2%64.5%118.2%129.0%107.5%86.0%86.0%
なかった00.0%00.0%00.0%00.0%00.0%00.0%00.0%00.0%00.0%00.0%00.0%
看護開始時期はいつが良いか.836.138.092.680.169.790.850.484.844.384.720
診断時から2115.7%3324.6%3727.6%118.2%8462.7%7354.5%10175.4%10276.1%9973.9%9772.4%9067.2%
抗線維化薬開始から21.5%00.0%00.0%00.0%75.2%53.7%96.7%118.2%96.7%75.2%86.0%
在宅酸素療法導入から00.0%00.0%00.0%00.0%10.7%00.0%21.5%21.5%21.5%21.5%21.5%
急性増悪後から00.0%00.0%00.0%00.0%00.0%00.0%21.5%21.5%21.5%21.5%21.5%

ICU, intensive care unit; HOT, home oxygen therapy

* p<0.05, ** p<0.01, *** p<0.001

χ2検定

下線は残差分析(χ2検定で有意な場合)にて有意(調整済みの標準化残差の絶対値>1.96; p<0.05)

主要項目を一部抜粋

4. 看護実践を従属変数,経験年数,性別,対象者の配置場所,呼吸器看護外来,呼吸器センター,関わった機会の程度,看護開始時期を独立変数とするロジスティック回帰分析(表3

対象者の配置場所は,「外来受診(訪問)時の30分以上の面談」,「生活状況の聴取」,「急性増悪の受け止めや知識の確認」,「退院前自宅訪問」,「在宅医療者との連携」,「正確な情報収集の支援」,「急性増悪後の生活支援」に関与していた.呼吸器看護外来は,「外来受診(訪問)時の30分以内の面談」と「外来受診(訪問)時の30分以上の面談」,「アドバンス・ケア・プランニング」,「情報収集に関することの援助」,「病状説明への同席」に関与し,呼吸器センターでは,「心理面・感情面(不確かさ)への支援」に関与していた.

関わった機会の程度は,「外来(訪問)時の30分以内の面談」と「外来(訪問)時の30分以上の面談」,「診断前の検査説明」,「生活状況の聴取」,「抗線維化薬の内服管理とモニタリング」,「医療費助成制度の説明」,「急性増悪の受け止めや知識の確認」,「急性増悪後の受け止めや予後」,「生活,および家族への支援」に関与し,看護援助の開始時期は,「病状説明後のカウンセリング」に関与していた.性別は,「外来(訪問)時の30分以内の面談」,「感染予防・予防接種への支援」,「抗線維化薬内服管理・モニタリング」,「在宅医療者との連携(文書/電話等)」に関与し,経験年数が関与する項目はなかった.

表3 看護実践と経験年数,性別,対象者の配置場所,呼吸器看護外来,呼吸器センター,関わった機会の程度,看護開始時期との多変量解析

項目βOR95%CIp項目βOR95%CIp
下限上限下限上限
外来受診(訪問)時の30分以内の面談正確な情報収集の支援
経験年数-.034.966.5001.880.920経験年数-.012.989.4812.027.974
性別1.217*3.3761.11610.210.031*性別.0671.069.3603.172.904
現在の配置場所.1701.185.8041.747.391現在の配置場所.362*1.4371.0082.048.045*
呼吸器看護外来1.908***6.738.92315.532<.001***呼吸器看護外来.926*2.5241.0506.063.038*
呼吸器センター-.145.865.3272.289.771呼吸器センター.0411.042.3762.883.937
関わった機会の程度.563*.569.358.905.017*関わった機会の程度-.431.650.3931.076.094
看護援助の開始時期-.482.617.2221.714.355看護援助の開始時期-19.1144.999<.001<.001.998
外来受診(訪問)時の30分以上の在宅療養支援診断前の検査説明(肺生検以外)
経験年数.7402.095.9354.695.072経験年数-.021.979.4772.008.953
性別.2271.255.3604.372.721性別-.519.595.1951.815.362
現在の配置場所.730*2.0761.2833.358.003**現在の配置場所-.437*.646.424.983.041*
呼吸器看護外来3.033***20.7626.68364.504<.001***呼吸器看護外来.2311.259.5183.059.611
呼吸器センター.0681.070.3313.466.910呼吸器センター.3321.394.5273.689.504
関わった機会の程度-.869*.419.212.831.013*関わった機会の程度-1.137***.321.173.595<.001***
看護援助の開始時期.4171.517.5114.504.453看護援助の開始時期-19.3703.868<.001<.001.998
生活状況(仕事・家事)の聴取病状説明の同席
経験年数-.097.908.3402.425.847経験年数.0021.002.5571.802.995
性別.9902.692.65111.135.171性別.5381.712.6934.228.244
現在の配置場所1.080*2.9441.0688.111.037*現在の配置場所.1211.129.8091.575.475
呼吸器看護外来-.141.868.2572.931.820呼吸器看護外来-.768*.464.221.974.043*
呼吸器センター.5801.785.3449.252.490呼吸器センター.4561.577.6513.824.313
関わった機会の程度-.666*.514.285.927.027*関わった機会の程度-.133.876.5991.280.494
看護援助の開始時期-.025.975.3902.437.958看護援助の開始時期.5271.693.7663.743.193
感染予防・予防接種への支援病状説明後のカウンセリング
経験年数.3061.358.5513.348.506経験年数-.072.931.5211.663.809
性別1.296*3.6561.03112.958.045*性別.6992.012.7955.094.140
現在の配置場所.9092.483.9706.351.058現在の配置場所.1821.199.8581.676.288
呼吸器看護外来1.0502.858.81710.001.100呼吸器看護外来-.685.504.2381.067.073
呼吸器センター-.857.424.1261.427.166呼吸器センター.5741.775.7464.222.194
関わった機会の程度-.284.753.4371.298.307関わった機会の程度-.194.824.5631.206.319
看護援助の開始時期.2261.253.4653.379.656看護援助の開始時期.848*2.3341.0205.341.045*
心理・感情面(不確かさ)への支援抗線維化薬内服管理・モニタリング
経験年数-.073.929.4561.896.841経験年数-.195.823.4141.633.577
性別.0721.075.3523.280.899性別1.111*3.0371.0928.447.033*
現在の配置場所.1451.157.7281.837.538現在の配置場所.1811.199.7911.816.393
呼吸器看護外来.4301.537.6073.891.364呼吸器看護外来-.303.739.3181.715.481
呼吸器センター-1.104*.332.122.904.031*呼吸器センター.6671.948.6375.952.242
関わった機会の程度-.388.678.4281.074.098関わった機会の程度-.812***.444.284.695<.001***
看護援助の開始時期-.199.819.3701.815.624看護援助の開始時期-.360.698.3041.603.396
アドバンスケアプランニング難病医療費助成制度等の紹介・支援
経験年数-.133.876.4861.580.660経験年数.1561.169.6372.146.613
性別.8122.254.8665.869.096性別.1561.169.4632.952.742
現在の配置場所.1711.186.8451.665.324現在の配置場所.0581.060.7481.501.744
呼吸器看護外来.7542.1251.0154.451.046*呼吸器看護外来-.088.916.4291.955.820
呼吸器センター.5401.717.7224.080.221呼吸器センター.0211.021.4172.500.963
関わった機会の程度-.137.872.5901.289.492関わった機会の程度-.513*.598.404.887.011*
看護援助の開始時期-.052.950.4272.110.899看護援助の開始時期-.942.390.1431.061.065
急性増悪の受け止めや知識の確認急性増悪後の受け止めと予後の傾聴
経験年数.0151.015.4652.218.970経験年数-.382.683.3081.512.347
性別.8242.280.7207.223.161性別.7672.153.6577.059.205
現在の配置場所.667*1.9491.0113.756.046*現在の配置場所.3161.372.8042.341.246
呼吸器看護外来.0501.052.3972.787.919呼吸器看護外来-.171.843.3132.272.736
呼吸器センター-.293.746.2432.285.608呼吸器センター-.216.806.2492.603.718
関わった機会の程度-.552*.576.355.934.025*関わった機会の程度-.584*.558.339.918.022*
看護援助の開始時期.5911.806.6515.005.256看護援助の開始時期.7162.047.5937.072.257
退院前自宅訪問急性増悪後の生活支援
経験年数.5431.721.8093.660.159経験年数-.657.519.2321.159.110
性別-.619.539.1791.621.271性別.4201.523.4165.578.526
現在の配置場所.420*1.5221.0552.196.025*現在の配置場所.892*2.4401.1205.317.025*
呼吸器看護外来.9482.581.9996.670.050呼吸器看護外来.7532.124.7236.238.170
呼吸器センター-.029.972.3123.021.960呼吸器センター.9232.516.63310.000.190
関わった機会の程度.2191.245.7602.038.384関わった機会の程度-.673**.510.313.832.007**
看護援助の開始時期-1.087.337.0512.248.261看護援助の開始時期.5141.672.6314.429.301
在宅医療者との連携(文書/電話等)急性増悪後の家族支援
経験年数-.248.780.4211.448.432経験年数-.390.677.3351.369.278
性別1.021*2.7771.0707.208.036*性別.4921.635.5454.909.381
現在の配置場所.460*1.5841.0352.424.034*現在の配置場所.3871.473.8902.438.132
呼吸器看護外来.0771.080.4932.366.847呼吸器看護外来.2251.252.5113.071.623
呼吸器センター.0211.021.4082.558.964呼吸器センター-.937.392.1431.074.069
関わった機会の程度-.165.848.5691.263.417関わった機会の程度-.708*.493.311.781.003*
看護援助の開始時期.5791.784.7574.203.186看護援助の開始時期.7192.053.7006.022.190

ロジスティック回帰分析;β,標準偏回帰係数;OR,odds ratio; 95%CI,Confidence interval

下線はHosmerとLemeshowの検定p<0.05

* p<0.05,** p<0.01,*** p<0.001

5. 看護実践の自由記載(表4

16人(12.3%)の記述があり,【患者会・勉強会に関する援助】,【療養生活・症状緩和に関する援助】,【病状評価と理解への援助】,【肺移植への援助】の4カテゴリーが抽出された.

表4 看護実践に関する自由記載

カテゴリー記載内容
【患者会・勉強会に関する援助】1.学習会によるスタッフ教育,医師とのカンファレンス
2.患者および家族を含めた勉強会,患者会の開催
【療養生活・症状緩和に関する援助】1.退院後訪問指導
2.医療費,自己負担額に関する支援
3.高流量のため外来受診方法を退院前に検討し不安の軽減を図る
4.HFNCから他の酸素療法へ変更し機械浴や散歩を支援
5.急性増悪時の代理意思決定支援,多職種カンファレンスの調整
6.終末期の直接的ケア,療養場所の意思決定
【病状評価と理解への援助】1.肺の状況と出現している症状を関連付けた説明
2.廊下歩行による経皮的酸素飽和度の低下を視覚的に捉える
3.療養者に聴診して頂き肺に起こっていることを説明
4.%DLco,pHの提示と低酸素が身体に及ぼす影響の説明
5.外来での6分間歩行
【肺移植への援助】1.肺移植をするか否かの意思決定支援,肺移植登録後の準備・療養支援
2.肺移植について説明,患者・家族の思いの確認
3.肺移植待機中の過ごし方(日常生活,栄養,運動など)

n=16; HFNC, high- flow nasal cannula; %DLco, % diffusing capacity for carbon monoxide; pH, potential hydrogen

内容分析

6. 看護師育成プログラムに含む必要性の程度(図2

看護師育成プログラムに含む必要性の程度を問う28問中25問で,「大いに必要である」,「必要である」の回答が90%を越え,演習では「大いに必要である」はすべて60%以下であった.

図2 看護師育成プログラムに含む必要性の程度

7. 看護師育成プログラムに含む必要性の程度を従属変数,対象者の配置場所,呼吸器センターの有無,関わった機会の程度,看護援助を開始する時期を独立変数とする多変量解析(表5

看護師育成プログラムに含む必要性の程度に関連する要因を探索するため,強制投入法による重回帰分析を行った(表5).共線性を回避するため,独立変数の相関分析を行い,相関なしと判断した.表5に有意差を認めた9項目を示す.Durbin-Watson による残差は1.803~2.160であり,自己相関を認めなかった.看護援助を開始する時期では,6つの独立変数との有意差を認めたが,標準偏回帰係数βはいずれも-0.3<β<0.2であり,看護師育成プログラムに含む必要性の程度に関与する変数はなかった.

表5 看護師育成プログラムに含む必要性の程度と対象者の配置場所,呼吸器センターの有無,関わった機会の程度,看護開始時期との多変量解析

属性薬物治療と開発在宅医療機器と生活支援遠隔看護尊厳に着目した看護援助抗線維化
薬の管理
・副作用
意思決定支援倫理調整看護診断家族性IPF
βββββββββ
対象者の配置場所.036.119.084-.032.025.083.180*-.001-.051
呼吸器センターの有無-.185-.086.018-.101-.198*-.081-.012.015-.003
関わった機会の程度.010.046.082-.005.017.130.073.161.055
看護援助を開始する時期-.198*-.252**-.187*-.245**-.098-.238**-.093-.061-.250**
R2.040.055.017.039.016.046.015-.003.032
Durbin-Watson1.8232.0622.0102.1602.0792.1221.9981.8031.868

R2:調整済み決定係数,β:標準偏回帰係数

* p<.05,** p<.01

強制投入法による重回帰分析

8. 教育上の課題と思う程度(図3

8問中7問で「大いに課題である」,「課題である」との回答が90%を越え,【看護を教育できる人材がいない】と最も多く回答していた.

図3 教育上の課題と思う程度

9. 看護師教育の必要性等に関する自由記載(表6

38人(28.4%)が記載し,【対応困難な疾患と経過】,【適切なケアが困難】,【看護師教育の必要性】の3カテゴリーが抽出された.

表6 看護師教育の必要性等に関する自由記載

カテゴリーサブカテゴリー
【対応困難な疾患と経過】難病だが少なからず存在
強い苦痛と予後への不安
多く見られる対応困難な事例
【適切なケアが困難】実施されにくい外来での生活支援
内部機能障害と捉える看護実践者の少なさ
IPFを理解してケアがなされていない
【看護師教育の必要性】看護基礎教育・現任教育いずれも受講機会が少ない
対象を全体的に看ることができる看護師育成の必要性
IPFは緩和ケア教育が必要
看護師の資格により教育内容が変わる

n=38; IPF, idiopathic pulmonary fibrosis

内容分析

考察

本研究は呼吸器疾患を専門とする看護師に,IPF療養者への看護実践の実態,および看護師育成プログラムの必要性の程度と教育上の課題を調査した我が国初の報告である.

1. 回答者の特徴

質問紙の回収率は49.3%であり,調査時期が新型コロナウイルス感染症の感染拡大と重なり,影響を及ぼした可能性がある.属性から中堅以上の看護師による回答と考えられ,IPF療養者に関わる機会が多い傾向にあることが示唆された.呼吸器看護外来の設置は全体の半分以下であり,呼吸器センターの設置は呼吸器看護外来よりさらに少ない.また,専従として組織横断的に活動している看護師は8.2%であり,ケア提供体制の充実を図るためにも,看護師の育成が必要である.IPF療養者に関わった機会の程度は「多かった」と「比較的多かった」が67.2%であり,回答には看護実践が反映されていると考えられる.

2. 看護実践項目について

看護実践項目の実践率は6割を越えており,回答者が呼吸器疾患の看護を専門としているためと考えられる.また,「在宅酸素療法の看護」,「急性増悪後の看護」は80%以上が実践しており,生活上の問題を抱えやすい項目のため16援助を要すると判断していたと考えられる.

一方,実践率の低い「診断時の看護」4項目,および「抗線維化薬の導入・中止の意思決定支援」は,外来で行われることが多い援助である.さらに,実践率が50%以下の項目のうち,「病状説明」,「アドバンス・ケア・プランニング」のいずれも外来で行われる機会が多い.外来に配置もしくは専従の者は26.9%であり,実践率の低さに反映されたと示唆される.以上により,IPF療養者の生活の質を支えるには,呼吸器看護外来の設置,外来と病棟,在宅とで連携できる看護体制の構築が課題と考えられる.

3. 看護実践項目と属性との関連について

「家族の病状の受け止めの傾聴」は,「看護師経験年数の20年以上30年未満」で有意差を認め,家族への看護が必要と経験的に学習し17,実践していると考えられる.また,各看護実践項目は「専従」において有意差を最も認め,あらゆる場所で看護を要していると考えられる.特に,「呼吸器看護外来」は看護実践項目の最も多くと有意差を認めており,経過全体を見据えた看護実践が提供されていると考えられる.「抗線維化薬内服管理・モニタリング」は,「呼吸器センター」と有意差を認め,治療場面に携わる機会の多さが示唆された.

4. 看護実践項目と属性との多変量解析について

「対象者の配置場所」により看護実践項目が異なる傾向が示唆された.「呼吸器看護外来」は,他の従属変数の中で唯一「アドバンス・ケア・プランニング」に関与していた.IPF療養者の緩和ケアニーズでは,受診した呼吸器専門センターの快適さが報告されており18,呼吸器看護外来ではIPF療養者の特性を考慮した看護の提供が考えられる.「関わった機会の程度」に関与した看護実践項目は「外来受診(訪問)時の30分以内の面談」であり,たとえ短時間であっても,IPF療養者の生活の困難さを理解し,支援の意思があることを示す援助をしていると考えられる.

5. 看護実践の自由記載について

身体の変化の認識を促し,生活の変化を支える看護が実践されていたと考えられる.また,呼吸器疾患を専門に診療・治療している病院,もしくは呼吸器センターを設置している病院と,呼吸器センターを設置していない病院や訪問看護ステーション等とで,可能な限り看護の均てん化や連携の仕組みづくりがなされると,IPF療養者の生活の質の維持に寄与できるのではないかと考えられる.

6. 看護師育成プログラムに含む必要性の程度について

「在宅医療機器と生活支援」が最も必要性が高かった.在宅酸素療法による運動時低酸素血症の回避は運動耐容能を改善する19ため,教育的ニーズが高いと考えられる.続いて「呼吸法・呼吸リハビリテーション」であり,症状緩和の困難さはIPF療養者と家族の生活に影響を及ぼしており15,教育的ニーズが高いことが示唆された.

7. 看護師育成プログラムに含む必要性の程度と関連要因に関する検討

看護師育成プログラムに含む必要性の程度に関与する要因は,みあたらないことが示唆された.多変量解析では,教育的ニーズに関与する変数がみあたらず,看護師の呼吸器疾患専門施設への所属に寄らないことが示唆された.教育的ニーズ調査は,4段階リッカート尺度で回答を求めた.質問項目の9割で「大いに必要である」,「必要である」の回答を合わせると100%に近く天井効果が考えられ,相関や重回帰分析の結果に影響を及ぼした可能性がある.

8. 看護師教育の自由記載ならびに教育上の課題について

自由記載から,IPF療養者への看護を学習する機会が看護基礎教育から多いとはいえず,人材育成や教材が課題と考えられる.本研究は,所属が訪問看護ステーションの割合が6%であり,在宅での看護の実態には迫れていないことが研究の限界である.今後の課題は,IPF療養者とその家族への看護の標準化を目指して,IPF療養者の特性に基づいた看護師育成プログラムを開発し,生活の質の向上に貢献することである.

結論

IPF療養者への看護実践の実態は,在宅酸素療法,および急性増悪後の看護で実践率が高く,生活援助の必要性を判断し実践していたと考えられる.看護実践項目には,対象者の配置場所,呼吸器看護外来,関わった機会の程度が関与しており,外来を中心とした継続看護体制の構築が課題である.また,IPFの看護教材,教育を受ける機会の少ないことが課題として挙げられ,療養者の特性に基づく看護師育成プログラムの開発が必要である.

謝辞

本研究にご協力頂きました皆様,ご指導ご鞭撻を賜りました聖路加国際大学大学院看護学研究科老年看護学亀井智子教授に深謝申し上げます.本研究はJSPS科研費 JP20K19112の助成を受け実施した.本研究の要旨は,第31回日本呼吸ケア・リハビリテーション学会学術集会(2021年11月,オンライン開催),ならびに第41回日本看護科学学会学術集会(2021年12月,オンライン開催)で発表した.

著者のCOI(conflicts of interest)開示

本論文発表内容に関して特に申告すべきものはない.

文献
 
© 2023 The Journal of the Japan Society for Respiratory Care and Rehabilitation
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