The Journal of the Japan Society for Respiratory Care and Rehabilitation
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Special Lecture
Total management of the ILD patients by the multi-occupational team
Keisuke Tomii
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2023 Volume 31 Issue 3 Pages 293-298

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要旨

進行性線維化を伴う間質性肺疾患(ILD)においては,患者の全経過を通じて多職種が支援していくチーム活動が求められる.当院では疾患軌道のステージごとに関わるAd hoc型の「間質性肺疾患サポートチーム」を結成した.2017年7月から2021年6月までの4年間にこのチーム活動で関わった後ろ向きコホート95名(IPF 68%, Non-IPF 32%)において,2022年5月までの抗線維化薬継続率は78%,外来リハビリテーション指導38%, 外来栄養指導29%,HOT導入42%,看護外来フォロー27%, コード決定内容のACP 29%,終末期のオピオイド投与17%,持続鎮静9%が行われた.慢性悪化による院内死亡の9例中7例,急性増悪死亡の5例中3例で本人によるコード決定があった.急性期総合病院におけるILD患者支援として,Ad hoc型の多職種サポートチームの関わりが実施可能で一定の効果をもたらす可能性がある.

はじめに

間質性肺疾患(ILD)は原因の特定できない特発性から,自己免疫疾患に伴うもの,職業環境要因が関わるもの,薬剤などの医原性,他のさまざまな疾患に起因するものなど多岐に渡り,その診断にはmultidisciplinary discussion(MDD:集学的検討)を要する.疾患経過は軽快ないし安定するもの,慢性悪化や急性増悪を繰り返すものなどあり,治療には原因回避や抗炎症薬などによる原因治療,原因によらず進行する線維化に対する抗線維化薬治療がある.また進行性の場合は患者の症状やQOL改善維持目的で呼吸管理,呼吸リハビリテーション,オピオイドなどの薬物治療,セルマネジメント支援,アドバンスケアプラニング(ACP),エンドオブライフケアなどから構成される緩和ケアを並行して行う必要がある.

このような多面的な関わりが必要なILD患者に対しては,医師,看護師のみならず,薬剤師,理学療法士,管理栄養士,ソーシャルワーカー,心理士など含めた多職種がそれぞれの専門性を軸として相互に働きかけながら患者の全経過を通じて支援していくチーム活動が求められる1.当院では2017年より急性期総合病院の特長を生かしながら,抗線維化薬の適応が考慮される進行性線維化病態のILD患者に対して,多職種の「ILDサポートチーム」を結成しチーム活動を行ってきた.本稿ではその内容と実績について紹介する.

ILDサポートチームの活動内容(当院の取り組み)

チーム構成として各職種のメンバーを固定し,同時かつ継続して関われば効率よく安定したチーム活動になると推測されるが,急性期総合病院では容易でない.そのため当院では患者さんの疾患軌跡のステージごとに,各専門職が入院時は短期集中,外来通院中は個々の外来で個別に関与する方法で活動した.すなわち担当医ならびに各職種の担当者は必ずしも固定せず,必要時にそのつど結成されるAd hocチームであった(図1).

図1

多職種Ad hoc型ILDサポートチーム

疾患軌道のステージ(枠内)毎にチームを結成し,多様で個別性の高いILD患者を支える.

① 患者向け冊子「間質性肺炎ハンドブック」2の作成

まず各職種で用いる教育資材として,患者向けに分かりやすく各パートを自身で記述した共通の冊子を作成した.これを支援が必要と判断された時点で患者に提供し,これを用いて各職種の外来や相談室,あるいは病室で指導した.

② ソーシャルワーカーによる社会経済的支援

治療にあたっては高額薬剤を使用する場合や,疾患進行に伴い在宅酸素療法(HOT)の導入や在宅介護,訪問診療を要する場合などがあり,社会経済的負担を軽減するために,院内ソーシャルワーカーと連携してさまざまな制度を活用するようにした.特に抗線維化薬導入時は,高額医療制度や指定難病制度の適応や認定の方法について事前に説明し,指定難病は軽症であっても高額治療を続けることで上限額を低減できる制度(“軽症高額”及び“高額長期”)のあることの理解を得るようにした.

③ 薬剤師外来による取り組み

進行性線維化病態のILDに用いる薬剤として鍵となるのは抗線維化薬である.線維化病変自体は非可逆性であり,可能な限り早期から用いて長期継続することが呼吸機能やQO Lの低下を抑制して健康寿命を延長させることにつながる.しかしながらこれらの服薬に伴う消化器症状や肝障害のため途中で休薬や中止に至る場合が多く,期待した治療効果を得るためには適切な服薬指導が極めて重要である.

抗線維化薬の副作用マネージメントにおいても抗がん剤同様に薬剤師が中心となって服薬状況や体調変化を詳細に聞き取り,有害事象の内容や程度を評価し,それに対するきめ細かい対処やアクションプランの提示,処方医へのフィードバックや提案が望ましい.当院では外来化学療法に準じて抗線維化薬に関する薬剤師外来を設け,処方直後から薬剤師が介入し,処方開始の数ヶ月間は受診毎に医師の診察前に薬剤師が有害事象に関する介入を行う方法(図2)を採用した.2020年までの時点で抗線維化薬の服薬継続率は介入前と比較して有意に改善したことを報告している3.またステロイドや免疫抑制薬,感染症や骨粗鬆症などの合併症予防の処方についても合わせて介入を行なった.

図2

抗線維化薬導入時のフロー(外来)

④ 呼吸リハビリテーションの指導

ILDに対する呼吸リハビリテーションは,4-8週間程度の外来プログラムに参加することで呼吸困難,運動能力,QOLの改善などが得られる4.わが国でもIPFに対してニンテダニブ併用下の呼吸リハビリテーションのランダム化比較試験(FITNESS研究)が行われ,6分間歩行距離の一時的改善や運動継続時間の延長などが認められた5.しかし急性期病院において頻回受診による外来プログラムを展開することは,スペースや交通手段の問題などで容易ではない.当院のサポートチームでは外来患者の診察日に理学療法室において自宅でできるリハビリテーションの指導を主として行なった.対象は6分間歩行試験でSpO2 最小値が90%未満,もしくはHOT導入後の患者で,まずオリエンテーションとしてリハビリテーションの意義を説明し,どのような動作でどのようなADL制限が生じているのかを確認し,各患者に合わせたコンディショニング,動作方法,酸素流量,運動療法などを提案した.その後の外来受診日に理学療法室において,歩行試験や運動療法の実施,自宅でのリハビリテーションの進捗確認などを行った.外来でのリハビリ指導が困難,もしくは急性増悪や在宅酸素導入目的での入院などがあれば,その際に2週間程度をめどに入院でリハビリ導入を行う場合もあった.

⑤ 栄養指導

経過中に体重減少が顕著もしくはフレイルの進むときは(図3),管理栄養士による栄養指導の介入が考慮される.当チームではリハビリ目的の入院時は全例医師から,外来では医師のみならず患者に関わる看護師や理学療法士から提案してもらい,食事内容の聞き取りによる食生活や摂取栄養量の把握,併存症や嚥下機能などの問題点に応じた食事の相談,栄養補助食品や医薬品栄養剤の紹介とともに,必要に応じて体成分分析を行った.

図3

フレイル・体重減少時のフロー(外来)

⑥ 在宅酸素療法の導入と継続

ILDに対する在宅酸素療法の適応は,2020年ATSガイドライン6によると,a)安静時PaO2<55 mmHgあるいは SpO2<88%,b)安静時PaO2 56-59 mmHg あるいはSpO2 89%で(浮腫,Ht>55%,心電図肺性P)のいずれかの場合に1日15時間以上のHOTが強く推奨されているが,労作時に著明な低酸素血症を来す場合にも労作時の酸素処方が提案されている.特にILDでは運動誘発低酸素血症(exercise induced hypoxemia: EIH)が顕著となる場合が多く,日常生活やリハビリの制限因子となりやすい.リハビリテーションを積極的かつ安全に実施するためにもEIHに対する在宅酸素療法の適応を考慮すべきであり,実際6分間歩行中にSpO2<88%となる患者に対する空気と酸素のランダム化クロスオーバー試験7でも酸素投与群で息切れやQOLスコアの改善が認められている.

HOTの処方にあたっては急性増悪や慢性進行に伴うリハビリテーション入院時に導入する場合もあるが,当院では慢性呼吸器疾患認定看護師を中心とする看護外来が多くを担った(図4).HOTの必要性と意義,その効果の説明などに加えて,酸素濃縮器や液化酸素の使用法,安静時と労作時の流量設定なども,実際の機器を用いて労作を行いながら指導し,本人のライフスタイルに合った機種や流量,設置や携帯方法の決定支援を行った.それに従って医師の方で最終的に処方したが,その後は看護外来も一定期間併診とし,酸素使用状況の遠隔モニタリングデータと付き合わせながら患者の受け入れや問題点の把握と指導を繰り返し,セルフマネジメント支援8を行った.また必要があれば身体障害者手帳の取得や障害福祉サービス,医療費助成制度などの案内をソーシャルワーカーに依頼した.

図4

在宅酸素療法導入時のフロー(外来)

⑦ アドバンスケアプラニング(ACP)と緩和ケア

慢性線維化性ILDの疾患軌跡で低酸素血症を伴う状態はCOPDと比べても著しく予後不良で9,とくに安静時でも低酸素をきたす場合は移植なしの50%生存は1年という成績もある10. したがってACPを考慮する上で,HOT導入時はひとつの重要な契機となる.HOT導入前でも急性増悪で致命的となる場合もあるので,本来はILD診断時や抗線維化薬導入時などもACPの契機であるが,より真剣に終末期と向き合うということでHOT導入時の開始がすすめやすい.

入院中であれ外来であれ,ある程度まとまった時間をACPの話し合いの場とし,医師と看護師,多職種で繰り返し行うことを基本とし,患者にとって最善の治療選択,療養場所,代理意志決定者,エンドオブライフケアの内容などを設定記録し,経過の中で意向や希望が変わる時はそのつど修正することとした.またコード決定などのエンドオブライフディスカッション(EOLD)の具体的イメージが伝わるように患者向け参考資料として「間質性肺炎とどう付き合うか~あなたらしく生きるために~」11を作成した.

ILDにおいて呼吸困難は患者の苦痛として最大のものでADLやQOLを低下させる主因でもある.緩和ケアは呼吸困難の緩和を主目的としてコンディショニングや運動療法主体の呼吸リハビリテーション,栄養療法などを軸として早期から実施されるべきであるが,終末期に至るとともに酸素療法,HFNC,NPPVなどの呼吸管理と緩和ケアチームの関与による心理的支援やオピオイド,鎮静剤など薬物による緩和が重要となる.死亡直前の最終末期においては呼吸管理としてHFNCを行うことが,食事や会話の維持という患者のQOL12と遺族からみた死亡時の質13に寄与することが示されており,当院でも最終的にHFNCまでのコード選択となる場合が多かった.

※  例えば最終的な呼吸管理法として,HFNC,NPPV,挿管までのどこまでを許容するか

チーム活動開始のタイミング

本チーム活動を開始するポイントとして,抗線維化薬導入時(図2),フレイル・体重減少時(図3),HOT導入時(図4),入院時(リハビリ目的・増悪入院安定後:図5)などを設定し,患者がその状況に至った場合に担当医の判断で開始され一定期間継続された.

図5

入院安定期のフロー

チーム活動の成績

2017年7月から2021年6月までの4年間に当院における「間質性肺疾患サポートチーム」が介入した患者として,抗線維化薬導入目的の薬剤指導を受けた患者を抽出したところ,総患者数は95名,年齢 72.4(43-84)歳,男性 67(71%)で,病型はIPF 65名(68%),Non-IPF 30名(32%)であった.これらの患者を後ろ向きコホートとして,チーム介入から2022年5月までの期間で死亡および最終観察時までの抗線維化薬継続率は74/95(78%)であった.中止は21例(22%)で,その理由は副作用8例(38%),疾患進行6例(29%),受診中止・転医・治験参加など7例であった.薬剤導入後のその他介入については,外来リハビリ指導:38%,28日後(中間値),外来栄養指導:29%,64日後,HOT導入:42%,281日後,看護外来:27%,319日後,EOLD内容のACP:29%,497日後,オピオイド投与:17%,570日後,持続鎮静:9%,693日後であった.救急入院は40%に認められ,初回までの日数は447日(中間値)であった.

観察期間中の死亡は30例(32%)で,抗線維化薬薬剤指導から死亡までの期間は18-1,455日(中間値 521日)であった.死亡の経過は慢性悪化33%,急性増悪27%,突然死 17%,他病死 6%,詳細不明 17%で,死亡場所は当院57%,他院23%,(7例中4例の経過は詳細不明),自宅20%(6例中の4例は突然死).当院で死亡した17例については,慢性悪化9例(53%),急性増悪5例(29%),他病死・突然死3例であった.慢性悪化例のうち6例(67%)が2型呼吸不全,7例(78%)で本人を含めて医師,家族が話し合ってコード決定でき,全例で最終コードはDNI(Do Not Intubate)で通常酸素4例 HFNC 5例で看取りとなり,入院期間は平均19日であった.急性増悪例の3例(60%)で本人のコード決定がありHFNCを最終とし,2例は本人のコード決定なくNIVを最終呼吸管理とし入院期間は平均9日であった.

考察と今後の課題

当院で2017年7月以降の4年間でチーム医療としての抗線維化薬導入を試みたIPFおよびPF-ILDの後ろ向きコホート解析を行った.個々の例で観察開始時の病状や経過観察期間は異なるが,薬剤師外来の介入で約80%,死亡打ち切りを含めても約70%の症例で抗線維化薬を1年以上継続でき,最近のレジストリーデータ14,15と比較しても良好な成績であった.外来でのリハビリテーションおよび栄養指導は比較的早期に30%前後の患者で実施された.観察期間中の死亡例は32%であるが,HOT導入は全体の約40%で要し,看護外来の関与は全体の約30%,本人へのEOLDに関わるACPも約30%で行われた.本コホートには肺機能正常例や導入後の進行が極めて緩徐なIPF症例も含まれたが,それ以外のPF-ILDを含む進行性の明らかな症例では突然死症例を除くと各種チーム医療の介入率は高かったと考える.経過の詳細が明らかな当院での死亡例に限ると,大半の症例で自身によるコード決定がなされた上でHFNCが最終呼吸管理となり,オピオイドの使用率は高く,急性増悪で10日前後,慢性悪化で20日前後の看取り入院期間であり,死亡時の質は比較的良好だったと推測される.

進行性線維化をきたすILD患者においては治療導入の初期から生涯にわたってのサポート体制が求められる.抗線維化薬による予後延長が明らかになった昨今,トータルマネージメントの取り組みはさらに重要性を増している.今回の「間質性肺疾患サポートチーム」による活動は抗線維化薬の服薬継続や死亡直前の緩和ケア実施においてある程度有効だったと考えるが,その他の介入についての評価は不明である.このようなチーム活動を広げていくための人員確保や診療報酬獲得のためには,適切なアウトカムを残していくことが今後最重要課題となる.とくに呼吸リハビリテーションや栄養指導,ACP,オピオイドなどのエビデンスを創出すべく多施設で努力を続けなければならない.その他今回関わることのできなかった課題として,患者や家族を巻き込むアクションプランの作成,心理的支援やオピオイド処方に関わる緩和ケアチームとの連携,回復期病院や在宅医との連携などが挙げられる.一施設だけでなく患者会などと協力しながら地域社会全体でILD患者をサポートする体制づくりが求められる.まずその足がかりとしてILDに限らず非がん性呼吸器疾患における入院,外来緩和ケアに対する診療報酬が算定できるようになることを期待する.

謝辞

当院の「間質性肺疾患サポートチーム」の取り組みに関わったすべてのスタッフ医師,専攻医,看護外来看護師,病棟看護師,薬剤師外来薬剤師,病棟薬剤師,管理栄養士,理学療法士,MSW,外来クラーク,最後に患者さんおよびそれを支えるご家族,介護者の皆様に御礼申し上げる.

著者のCOI(conflicts of interest)開示

富井啓介;講演料(日本ベーリンガーインゲルハイム,帝人ファーマ,帝人ヘルスケア,アストラゼネカ,グラクソスミスクライン)

文献
 
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