社会学評論
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職業的地位が高齢期の就業行動に与える影響
―ジェンダーによる効果の異質性に着目して―
新田 真悟
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2024 年 74 巻 4 号 p. 768-781

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抄録

65歳以上高齢男性の労働市場からの引退に過去の職業経歴が影響を与えることが明らかになっている.一方で,先行研究では高齢女性の引退における職業経歴の役割を十分に明らかにできていない.そこで本稿では,初職から引退前までの長期間の職業経歴に着目し,長期間の職業的地位が高齢期の就業に与える影響の男女間での異質性を,2015年 SSMデータを用いて潜在アウトカムにもとづいた因果推論の枠組みから検証した.任意の職業時点ではなく職業経歴全体を分析射程に含めることは,男性だけでなく職業経歴上の中断を経験しやすい女性の高齢期の就業行動にたいする説明を提供するうえで大きな意味を持つ.

分析の結果,職業的地位は高齢男性の就業に負の影響を与える一方,高齢女性の就業には正の影響を与えることが明らかになった.職業経歴全体から職業的地位が高齢期の就業行動に与える影響を検証した以上の結果は,一時的な無業を経験し,低い職業的地位に留まり続けている女性が,長期的・慢性的な機会費用の損失に暴露されており,高齢期になっても就業していることを示唆する.

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