2018 年 69 巻 1 号 p. 125-142
現在, さまざまな場面でボランティアが活動しているが, 行政や受け入れ機関の補助的下請け的存在として位置づけられることで, その強みや潜在力が十分に発揮されないという「下請け化問題」が指摘されている. 本稿が取り上げる病院ボランティアは, 行政の推進政策のもと, 増加傾向にあるが, その活動内容は依然として病院の下請け的仕事にとどまっているケースが多い. そうしたなかで, Y病院血液腫瘍科でZさんという女性が行っているボランティア活動は, そうした補助的下請け的仕事を超える拡がりをみせている. 本稿はその要因として, Zさんに対する病院スタッフの「認識」に着目する. 本稿ではまず, 病院ボランティア活動の拡がりを阻害する病院スタッフの3つの認識―「軽視認識」「脅威認識」「負担認識」―を確認する. 続いて, これら3つの認識と対照する形で, 血液腫瘍科のスタッフがZさんの活動に対してどのような認識を抱いているのかについて検討する. その結果, 血液腫瘍科のスタッフは, ①Zさんを代替困難な仕事の担い手とみなしていること, ②Zさんを協働して仕事を行うチームの一員や理解者とみなしていること, ③Zさんの活動は患児や家族の支援に寄与するものであり, その活動に協力することによる業務量の増加を負担とは認識していないことが明らかになった. 最後に本稿では, これらの知見がボランティアの下請け化問題について有する実践的含意について論じる.