抄録
強度行動障害は以前から課題になっており,現在も課題になっている.長らく,知的障害の問題と考えられていたが,現在は知的障害のある自閉スペクトラム症を背景に持つと考えられる者が約8割で,残りは知的障害を持つ器質性障害(結節性硬化症,脳炎・髄膜炎後遺症,小頭症など)などと考えられている.表面に出てくる症状ばかりに目をやって,薬物を増やしてもよい結果は得られない.その背景にあるものを考えて,その背景への対応を考える必要がある.強度行動障害とされる症状の多くは,生まれつき存在しているわけではなく,環境や対応によって引き起こされると考えられている.福祉,教育,医療など一つの分野だけでは解決できないものであり,各分野の協力が必要である.知的障害児施設,児童青年精神科病院では,成人を迎えた強度行動障害児を抱えており,児者転換がうまくいくようにすることも今後の重要な課題である.