抄録
粘表皮癌は,小唾液腺や耳下腺に好発し,舌下腺に発生することはまれである。本腫瘍は,臨床所見に乏しく,早期の病理組織学的診断による治療方針の決定が重要である。今回われわれは舌下腺に生じた低悪性度粘表皮癌の1例を経験したので報告する。患者は47歳,男性,右側口底部の腫脹を主訴に当科を受診した。右側舌下腺部に弾性硬の無痛性腫瘤を認めた。CTおよびMRIにて右側舌下腺相当部に周囲と境界明瞭な類円形病変を認めた。生検にて低悪性度粘表皮癌との病理組織学的診断を得た後,悪性腫瘍切除術を施行した。病理組織学的検査では舌下腺内に類表皮細胞,中間細胞および粘液細胞が充実性に増殖する腫瘍組織を認めた。術後1年9か月経過した現在まで再発の徴候を認めず経過良好である。