抄録
患者は55歳,女性。1994年1月に左側頬部の腫瘤を自覚したが,頬部に切開を加えることを恐れ,放置していた。1995年9月に当科を初診し,CTにて左側頬部に3.5×2.5cm大の腫瘤を認めた。左側副耳下腺腫瘍の診断にて患者の希望もあり口腔内から腫瘍摘出術を施行した。術中,腫瘍の被膜を損傷し,腫瘍は分割して摘出した。病理組織学的診断は多形腺腫であった。自己判断により通院を中断していたが,2008年3月に左側頬部の腫脹を主訴に当科を再受診した。左側頬部に頬骨弓内側に進展する,7.8×5.7cmの腫瘍を認めた。左側副耳下腺多形腺腫再発の診断にて,同年4月に経頬アプローチにより腫瘍切除術を施行した。病理組織学的診断は多形腺腫再発であった。2009年3月に術後の頬部陥凹に対し,血管柄付き遊離前腕筋膜脂肪弁による再建術を施行し,患者の満足が得られた。