抄録
近年になって新しいフォスフォジエステラーゼ(PDE)阻害薬のオルプリノンが登場し,集中治療領域でも使用されるようになってきたが,その腹部臓器血流に及ぼす影響はわかっていない。今回我々はオルプリノンの腹部臓器血流に及ぼす影響を,予定開心術後患者11例の肝静脈血酸素飽和度の推移より検討した。
術後,循環動態および体温の安定した後,オルプリノン0.3μg・kg-1・min-1を持続投与し,その前後で各種血行動態値および動脈血,混合静脈血,肝静脈血の血液ガス分析を行った。さらにFickの式より腹部臓器血流の変化率を算出した。その結果,オルプリノンは心拍出量を増加させ,肝静脈血酸素飽和度を上昇させた。また,算出された腹部臓器血流の増加率は心拍出量のそれより有意に大きく,オルプリノンの選択的な腹部臓器血流増加作用が示唆されたが,結論づけるためには今後対象群を設定した研究が必要である。