日本集中治療医学会雑誌
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一酸化窒素吸入療法が有効であった急性広汎型肺血栓塞栓症の1例
山部 一恵赤池 雅史加藤 道久多田 文彦山田 博胤荒瀬 友子神山 有史
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1996 年 3 巻 4 号 p. 283-287

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抄録
症例は75歳,男性。開頭腫瘍摘出術を施行した2ヵ月後に,突然,意識障害,血圧低下をきたした。低酸素血症,右脚ブロック,肺動脈圧の上昇,肺血流シンチグラムで灌流欠損像が認められ,急性広汎型肺血栓塞栓症と診断した。人工呼吸器を用いた呼吸管理と血栓溶解療法を行ったが肺酸素化能の改善は不十分であり,5ppmの一酸化窒素(NO)吸入を開始した。PaO2/FIO2比はNO吸入により164から194まで上昇し,30分間の吸入中止により90前後へ低下した。また,肺動脈圧と肺血管抵抗はNO吸入により低下した。本例は,肺血栓塞栓症の急性期においてNO吸入療法が肺酸素化能や肺高血圧の改善に有効であることを示した。
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