日本集中治療医学会雑誌
Online ISSN : 1882-966X
Print ISSN : 1340-7988
ISSN-L : 1340-7988
慢性腎不全/透析患者における急性冠症候群
田中 啓治吉川 雅智
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 13 巻 4 号 p. 417-422

詳細
抄録
我が国における慢性腎不全患者の数は増加の一途を辿っており,血液透析(hemodialysis,HD)を受ける症例数も毎年およそ1万人ずつ増加しているという。かかる症例の死因の第1位に挙げられるのが,急性冠症候群(acute coronary syndrome, ACS)に代表される虚血性心疾患である。その理由は,慢性腎不全患者が糖尿病,高血圧,左室肥大などに加え,特異的な多くの冠疾患危険因子を有するからである。冠動脈病変の特徴はこれら因子によって誘導された異所性化骨現象に基づく重篤なプラーク内カルシウム沈着と著しい中膜肥厚である。急性冠症候群を発症し透析患者の予後は極めて不良とされるが,近年の冠動脈再灌流療法の進歩によって改善が認められるようになった。今後,慢性透析患者の冠動脈石灰化に対する有効な予防対策や新たな治療法を見い出すことによって,冠動脈再灌流療法の効果は一層高まるものと考える。本稿では,この両疾患によってもたらされる病態とその対策について述べる。
著者関連情報
© 日本集中治療医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top