2010 年 13 巻 4 号 p. 493-497
プレホスピタルケアを担う救急隊員(おもに救急救命士)に対して,奈良県メディカルコントロール協議会の下,PSLSコースを導入した。救急救命士には,その受講を義務づけ,研修会を継続開催している。奈良県内で冬季3ヶ月に救急隊員によって脳卒中が疑われたあるいは脳卒中であった搬送症例について, その有用性について検討した。脳卒中の疾病分類では,虚血性脳卒中が約70%を占め,全国的な報告と同様であった。救急隊員による脳卒中判断の的中率は,PSLSコースの受講あり群78.4%,受講なし群75.1%で,受講あり群が若干高率であった。患者搬送において,搬送時間は,受講あり群40.0分,受講なし群42.6分で,受講あり群が短い傾向であった。とくに現場滞在時間は,受講あり群17.1分,受講なし群19.7分で,受講あり群が有意に短いものであった。脳卒中は早期対応が要求されることから,PSLSコースを継続開催することは有用なことと考えられた。