2020 年 24 巻 2 号 p. 170-176
【目的】舌ブラシには,歯ブラシのような植毛タイプや,アーチワイヤー状のタイプ,細かいループ状のナイロン毛が植毛されたナイロンブラシタイプなどいろいろな形状がある.ナイロンブラシは舌苔が厚い場合に有効である一方,使用後に水洗をしても汚れが落ちにくかったり,細菌が繁殖しやすくなったりする恐れがある.そこで,ナイロン毛のループ部分をカットしたブラシを作製し,細菌の除去効果を従来のブラシと比較した.さらに,流水下での洗浄によるブラシに付着した細菌の残留について比較した.
【方法】ナイロン毛がループ状になっているループブラシ(W-1 ブラシ,SHIKIEN)と,ループ部の一部をカットしたループカットブラシを使用した.各ブラシでBHI 寒天培地上に播種したS. aureus を擦過し,除去した細菌数を比較した.また,洗浄方法を検討するため,洗浄なし,手でブラシを擦らず流水下に10 秒おいたブラシ,流水下でブラシを0,5,10,30 秒擦ったブラシに付着していた細菌数を比較した.
【結果】ループブラシおよびループカットブラシで除去した細菌数の中央値はそれぞれ2.0×1011 cfu/mL,2.1×1011 cfu/mL で,統計学的有意差は認められず,細菌の除去能力は同等であった.また,ループブラシ,ループカットブラシのいずれも,洗浄前と比較して,5,10,30 秒の手洗いで有意に付着細菌数が減少していた.特にループカットブラシでは,5 秒時に99.9% 細菌数が減少し,10 秒時にはさらに減少していた.10 秒時と30 秒時では統計学的有意差は認められなかった.したがって,ループカットブラシは,ループブラシと同様な細菌除去効果をもちながらも,洗浄後に付着している細菌数が少なく,感染源となる可能性が低いこと,また,5 秒間の流水下での洗浄で99.9% の細菌が除去できる可能性があることが示された.