日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
症例報告
筋萎縮性側索硬化症患者の胃瘻造設に非侵襲的陽圧換気療法と内視鏡孔を有するマスクを用いた1 例
池ノ内 紀祐稲垣 智則大立 知子林 修平黒田 浩一松澤 令子髙橋 幸子富田 康裕原 徹
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キーワード: NPPV, ALS, 胃瘻
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2013 年 17 巻 3 号 p. 239-244

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抄録

【緒言】非侵襲的陽圧換気療法(noninvasive positive pressure ventilation; NPPV)は,気管内挿管をすることなく非侵襲的に換気補助を行う方法として,各種疾患の治療に用いられている.当院では2007 年より,呼吸不全の患者の気管支鏡検査の際に,NPPV による換気の補助を行うことにより安全に検査を施行できた症例を経験している.今回われわれは,Ⅱ型呼吸不全を併発した筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis; ALS)の患者で,NPPV での呼吸管理により安全に胃瘻造設を施行しえた症例を経験したので報告する.

【症例】67 歳,女性.2010 年,ALS を発症.2011 年12 月,呼吸困難を主訴に来院.呼吸筋麻痺の進行によるⅡ型呼吸不全として加療目的で入院となった.

【経過】入院同日よりNPPV による呼吸管理を施行.呼吸不全は速やかに改善したが,球麻痺の進行および全身の筋力低下による喫食量の減少のため,経管栄養を目的とした胃瘻造設を行うこととなった.経皮内視鏡的胃瘻造設術(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy; PEG)が予定されたが,呼吸筋の萎縮に加え,術中の鎮静剤の使用による呼吸不全の悪化が危惧されたため,NPPV による補助換気下での施術となった.使用したマスクは,内視鏡挿入孔を有するスミスメディカル社のエンドスコピーマスク® を用い,NPPVの機種はフィリップス・レスピロニクス社のV60®を用いた.ミダゾラム10 mg の経静脈的投与にて鎮静を得たのち,NPPV によるマスク換気下PEG を施行.呼吸状態の悪化をきたすことなく胃瘻を造設した.

【考察】呼吸状態の不良な患者の胃瘻造設において,NPPVによる呼吸補助は有用な方法のひとつであると考えられた.ただし,その適応は,各施設のNPPV への習熟度やチームとしての医療体制によっても異なってくるものと思われる.

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© 2013 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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