2024 年 80 巻 11 号 論文ID: 24-00173
鋼構造物の防食塗装更新において,誘導加熱(Induction Heating: IH)を利用した塗膜剥離の適用が注目されている.高力ボルトの塗膜剥離にIHを利用する場合,加熱がボルト軸力に及ぼす影響について不明な点が多い.本研究では,IH塗膜剥離に伴う加熱による高力ボルト軸力の変動機構を明らかにするため,一連の実験および数値シミュレーションを実施した.塗膜剥離に要する温度(200℃程度)に達するまでの時間が短いほど,ナットとボルト軸部の温度差が大きくなった.この温度差によりナットとボルト軸部の膨張,収縮量が異なり,篏合にずれが生じるために軸力が低下することを明らかにした.200℃までの加熱時間を15~30秒とすることで,加熱前の状態に対し軸力が4~6%低下する可能性を示した.