2025 年 2025 巻 FIN-034 号 p. 67-74
ベーシックインカムは近年着目されている社会福祉政策のアイデアである.しかし,ベーシックインカムを実施するためには社会経済システムの大幅な変革が必要になり,その影響を予測することは困難である.そのため,理論的な研究は進まず,実証実験に基づく研究が主体となっているといえる.こうした不確実性を解消するため,本研究では相対的な所得に基づく効用を組み込んだ複層的なフィードバック構造を持つマクロ経済モデルを構築した.このモデルを用いて,ベーシックインカムの効果が経済状況によってどのように変化するかという,これまで着目されてこなかった分析を試みた.その結果,社会を構成する労働者の労働意欲次第で,成長期の経済が停滞することもあれば,低迷する経済が活性化する可能性もあり,BIの導入による影響は条件付きあることが明らかになった.