抄録
2010年以降,当院耳鼻咽喉科と脳神経外科とのチームで経鼻内視鏡による腫瘍切除を行った嗅神経芽細胞腫9症例を対象とし,患者因子,手術因子,予後などについてレトロスペクティブに解析した。腫瘍の進行分類はModified-Kadish分類ではA/B/C/D=1/4/4/0,Dulguerov分類はT1/2/3/4=1/4/2/2であった。3例で開頭腫瘍切除を併用した。頭蓋底再建には5症例で筋膜,頭蓋骨膜,鼻中隔粘膜弁を用いた3層構造の再建を行い,全例で術後髄液漏を認めなかった。7例において術後放射線治療を施行した。3例に再発を認め,追加治療を行った。観察期間は短いものの現時点で全例生存中である。近年は頭蓋内浸潤を伴う進行例においても内視鏡下手術が行われており,術後放射線治療を行うことにより,開頭法による拡大切除と同等の治療成績が得られることが報告されている。今後は内視鏡下腫瘍切除術が嗅神経芽細胞腫の中心的な役割を担うと考えられる。