実験社会心理学研究
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成功・失敗の帰因作用に及ぼすself-esteemの影響
鹿内 啓子
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1978 年 18 巻 1 号 p. 35-46

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抄録
自分の成功または失敗の帰因作用にself-esteemがどのような影響を及ぼすかを検討した。仮説はself-esteemの高い (高SE) 人は成功を能力に, 失敗を努力に帰因し, 他方self-esteemの低い (低SE) 人は成功を運に, 失敗を能力に帰因するだろう, というものである。
被験者は申学2年生70名。self-esteemは質問紙によって測定し, 得点の上位1/4以内の者と下位1/4以内の者を選んだ。また, 同年齢の平均点として, 実際のそれよりも低いまたは高い偽りの点数を教示して, 成功・失敗を操作した。課題は4文字のアナグラムである。課題遂行後, 自分の結果についての帰因を, 能力, 努力, 課題の困難度, 運, そして調子の5要因による一対比較法で測定し, また次試行の結果についての予想も測定した。これを第3試行まで繰り返した。
圭な結果は次のようであった。
1. 高SE群は失敗を努力に, 低SE群は成効を運に強く帰因し, 仮説は支持された。また, 高SE群は低SE群よりも成功を能力に帰因するが, 失敗については逆の関係がみられ, 両群を相対的に比較すると, 能力についても仮説が支持された。
2. 低SE群も高SE群と同様に失敗を努力に強く帰因した。これは, 高SE群は不安定要因としての努力に, 低SE群は内的要因としての努力に帰因する結果と解釈された。
3. 全般的に, 成功を外的要因に, 失敗を内的要因に帰因するという控え目な帰因傾向がみられた。
4. 帰因作用と成功に対する期待の高さとの関係については, 従来の知見が明らかには支持されなかった。
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© 日本グループ・ダイナミックス学会
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