抄録
百貨店の従業員 (n=369) における仕事の特性とワークモチヴェーションの関係が, Hackman & Lawler (1971) の枠組にもとずいて分析された。とくに, いわゆる成長欲求のようなより高次のニーズの, それらの関係におよぼす媒介的な効果について検討された。
得られた結果は, ほぼ従来の知見を支持するものであった。つまり, 仕事の特性はワークモチヴェーションと有意な相関関係を示した。そして, 成長欲求の強い従業員では, いくつかの仕事の特性次元とモチヴェーション変数との関係が有意に高いことが示され, 仲介的効果が実証された。しかし, 従来の欧米の研究と比べて, その差は著しいものではない。
加えて, ワークデザィンにおける方法論的な問題が提起された。すなわち, 1) 充実化された仕事に対する反応の個人差に配慮した時, 仕事の複雑さを1つの尺度にまとめることは難かしいこと。2) 人間関係に対する満足感と仕事の複雑さに対する積極的な反応は逆の関係を示す傾向がみられること。つまり, 仕事の特性のワークモチヴェーシ藝ンに対する効果は, そのコンテクストを無視しては得られないことを意味している。3) 公平感のように, 直接仕事の特性とは関係しないにもかかわらず, 仲介的効果を示す外部的な要因が存在しうることなどである。
今後の課題として, 仲介変数などの概念をより明確にしながら, より広範な職種について, 仕事の特性とモチヴェーションの関係の比較検討をおこなうべきである。