実験社会心理学研究
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PM式リーダーシップ調査に関する条件分析的研究
黒川 正流
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1975 年 15 巻 2 号 p. 142-161

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抄録
リーダーシップPM論において, リーダーの行動とその行動に対するフォロワーの認知の関係, およびP機能とM機能の交互作用を吟味し, 問題点を発見整理する目的で, 調査資料の再分析が行なわれた.
産業企業体2社で実施されたPM調査結果を吟味したところ, つぎの事実を見出した.
1. 部下の認知評定点の集団平均値に基づいて類型化された監督者のリーダーシップ・タイプと, 個々の部下成員が認知している監督者のタイプは, おおむね半数以下の部下成員についてしか一致しなかった. とくにP型あるいはM型に類型化される監督者の部下は, その監督者をP型あるいはM型と認知する者の率が低かった.
2. リーダーシップ類型と成員のモラールとの関係を分析する場合, 監督者の類型単位でみるよりも, 成員個々の認知類型単位でみる方が, 類型間のモラール差がより明瞭に認められた.
3. 個々の成員のリーダーシップ認知類型が同一類型であれば, その成員が所属する監督者の集団平均類型がモラールに影響する傾向が見出された. しかし, PM型の監督者をPM型と認知している成員と, pm型の監督者をPM型と認知している成員とを比較した場合, そのリーダーシップ認知評定点は前者が後者よりも有意に高かった. 他の類型の監督者についても同様の傾向が見出された. 個人の認知評定点を一定にコントロールした場合, 若干のモラール項目に対して監督者の集団平均点の効果がわずかながら見出された.
4. 監督者に対する部下の認知評定点の分散が小さな集団は, 認知評定点の分散の大きな集団にくらべて, モラール平均点の高い集団がより多いという傾向が見出された.
5. リーダーシップPM座標平面を想定して詳細にモラール得点の高さを検討したところ, P機能とM機能が共通してモラールにポジティヴな加算効果を示すのは, 座標平面上のPもMも高い領域においてであった. pmの領域におけるリーダーシップ得点の上昇にくらべて, PMの領域における同程度のリーダーシップ得点の上昇の方が, モラールに及ぼす効果は大であった. P機能は領域によってモラールに対しネガティヴな効果を及ぼすことが見出された.
リーダーシップM機能は, リーダーシップP機能がポジティヴに機能するための必要条件であると考察された
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© 日本グループ・ダイナミックス学会
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