抄録
本研究は, 第一線監督者のリーダーシップ機能に関する自己評定についての検討をおこなった。以下の点が見い出された。
(1) 自己評定値と部下評定値の間には認知的不一致が見い出された (Table 1)。
(2) この認知的不一致は量的側面について著しく, リーダーシップ方向における認知的不一致は比較的小さい (Table 4, 6)。
(3) また, 自己評定と部下評定の相関について検討をしたところ, P機能にのみ企業別部門別に差異を見い出し, 組織特性との関連が考察された (Table 2, 3), (Table 13~16)。
(4) 第一線監督者の職務満足度は, 第一線監督者の自己評定のP得点, 第二線監督者のM得点 (第一線監督者の評定) と関係あることが見いだされた (Table 8, 9)。
(5) 同様に, 第一線監督者が部下集団に対してもつ“リーダーにとってのやりやすさ”について検討したところ, 第一線監督者の自己評定のM得点, 第二線監督者のPM両得点 (第一線監督者の評定) と関係あることを見い出した (Table 10, 11)。
以上の分析から, 自己評定の妥当性が充分高いものであるという根拠は得られなかったが, 部下評定と自己評定では異ったリーダーシップ空間を構成していると考えられ, 両者のリーダーシップ空間がどのように関連しあっているのか, という点については今後の研究課題としたい。