2024 Volume 24 Issue 01 Pages 52-67
鈴木 はる代(つくば市立沼崎小学校)名畑目 真吾(筑波大学)
キーワード:話すこと,評価,不安
本実践論文では,「話すこと」のテストについて小学生が感じていることを明らかにし,学習者•指導者双方にとって,取り組みやすく意義のある評価について考察する。まず,小学 5 年生の児童に,単元末に「話すこと」のテストとアンケートを実施し,テストを経験する前後ではどのように気持ちが変化したのかを調べた。また,6 年生の児童に,これまでに経験したいくつかの形式の「話すこと」のテストについてアンケートを実施し,取り組みやすいのはどのようなテスト形式なのかを調べた。調査の結果から,5 年生が教科として初めて取り組んだ「話すこと」のテストの実施後では,テストに対する不安度が実施前よりも緩和される傾向が確認されたものの,全ての児童においてそのような傾向が見られたわけではなかった。6 年生に対する,これまでに経験したテスト形式に関する調査の結果からは,ペアで録音や撮影を行う形式のテストが好まれやすく,大勢の前で発表する形式は好まれないことが示された。また,児童の記述回答からは,1 人よりもペアのほうが不安が減少することなどが明らかになった。これらの結果から,「話すこと」のテストを学習者•指導者双方にとって効果的に実施するためには,学習者の不安が低い形式から始めて段階的に様々な形式を取り入れていくことや,テスト実施後にフィードバックを与えることの重要性などが示唆された。
国立教育政策研究所教育課程研究センター発行の『「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料』においては,学習評価の充実が述べられ,資質•能力の 3 つの柱を評価するために多様な評価方法を取り入れることの重要性が述べられている(国立教育政策研究所教育課程研究センター, 2020)。また,小学校外国語科においては,内容ごとのまとまりに基づく評価として,5 つの領域ごとに評価規準を作成することが基本とされている。「話すこと」は 5 領域のうち 2 つを担っているが,その評価においては様々な形式のテストを通じて多様な力(発表力,やり取り力,即興で話す力,準備して話す力など)を評価することが重要とされている(小泉,2022)。
小学校外国語科における「話すこと」の評価の重要性は論を待たないものの,その研究や実践は必
ずしも多くない。『小学校英語教育学会紀要』(第 1 号~第 11 号)及び JES Journal(Vol. 12~Vol. 21)に収録されている論文を分析した萬谷ら(2022)によると,これらにおいて「話すこと」に関する研究•実践論文は「読むこと」や「書くこと」に比べて少なく,「小学校段階では話すことは授業の中心として位置づけられることがほとんどであるにも関わらず,発表されている研究論文数が少ないことは予想に反する」(p. 204)と述べられている。また,上記の分析対象において「評価」に関する研究や実践は多く見られるものの,「話すこと」の評価に特化したものは非常に限られている (cf. 泉ら, 2022)。
「話すこと」の評価では,学習者が英語を使って発表したり,やり取りしたりしているところを評価するパフォーマンス評価が基本となるが,子どもの学習者においては動機づけ,態度,自尊心といった情意的要因がパフォーマンスに与える影響が大人よりも大きくなることが知られている (Wolf & Butler, 2017)。また,子どもは大人よりも評価に不安を感じやすいとされ,特に不安を感じやすいと考えられる「話すこと」の評価においてその不安をどのように減じることができるのかは,今後の小学校外国語科において重要な課題である。
さらに,学習者にとってだけでなく指導者にとっても「話すこと」の評価に関する研究は重要な意味を持つ。学習者•指導者双方にとって,学習あるいは指導を振り返り改善していく材料として評価が非常に重要なのは言うまでもない(泉,2020)。一方で,小学校で教師が児童の話す力を評価する際には,単元指導計画の中でどのように位置づけるか,1 つの学級の児童を何人ずつどのように評価するか,そのためには何時間必要か,評価者は JTE / HRT / ALT のうち誰が何人で評価するか,評価基準•規準をどのように定めるかなど,多くのことに配慮して計画的に実施しなければならず,教師にとっても負担が大きい。さらに,保護者にとっても大きな関心事である成績に直結する評価については,多くの指導現場で教師が試行錯誤しながら緊張感をもって取り組んでおり,「話すこと」の評価に関する情報は広く共有されていくべきである。
そこで本実践論文では,小学校外国語科で学ぶ児童が「話すこと」の評価において何を感じているかを調査し,今後の「話すこと」の評価と指導の実践に向けて有益な示唆を得ることを目的とした。
本実践では,「話すこと」のテストについて児童が感じている不安を調査し,今後の学習指導やテスト実施への示唆を得るため,以下の 2 点を調査課題とした。
(1)「話すこと」のテストを経験する前後で児童のテストに対する不安はどのように変化するか (2)どのような形式の「話すこと」のテストが児童にとって最も取り組みやすいのか
(1)については,教科として外国語の学習に取り組むようになった小学 5 年生が,どのような気持ちで初めての「話すこと」のテストに取り組んだのか,また,初めての「話すこと」のテストを終えてどのように気持ちが変化したのか,あるいは変化しなかったのかをアンケートで調査した。(2)については,5 年生の時に対面,録音,撮影,クラスメート全員の前で発表などいくつかの形式を,1 人あるいはペアで「話すこと」のテストとして経験してきた 6 年生にとって,取り組みやすいのはどの
ような形式の「話すこと」のテストなのかを,アンケートで調査した。なお,発表やテストなどの「話すこと」の単元末活動は調査のために行ったものではなく,単元のまとめとして様々な形式を取り入れながら毎単元何らかの形で実施しているものである。
本実践および調査 1 の分析対象者は,茨城県内の公立小学校 5 年生 2 クラス合計 53 人である。在
籍している 64 人のうち,「話すこと」のテストに参加した 60 人に,テスト後にアンケート(2.2.3 参
照)に回答してもらった。今回は,児童に正しく意味が伝わらなかった 1 問を分析の対象から除き,
2 つの設問両方に答えた児童 53 人を分析の対象とした。調査校は教育課程特例校となっており,市内の他の学校と同様に小学校 1•2 年生で,担任が行う年間各 10 時間の外国語活動を取り入れている。今回の調査を行うにあたっては,調査前に内容や目的について参加者に説明するとともに,アンケートの結果は成績に影響しないことを伝え,協力してもらうよう同意を得た。
対象とした 2 クラスは,第一著者が専科教員として外国語科の授業を担当しており,週 2 時間の授業は毎回 ALT とのティーム•ティーチングで実施している。この学年が 3 年生だった時は第一著者が外国語担当として週 1 時間,4 年生の時は中学校英語免許を所有する別の学年担当教師が週 1 時間の外国語活動を担当していた。
2023 年 5 月,教科書を用いて学習した最初の単元の最後に,教科書の内容に基づいて ALT と 1 対
1 の対面での「話すこと」のテストを実施した。この単元のめあては「名前や好きなもの•ことを伝えよう」であり,目標英語表現は“How do you spell your name?"と自分の名前のつづりを答える言い方,また“What·do you like?"および“I like·."である。児童は単元の中で,はじめに単元末の目標となる会話の動画を視聴しイメージを持ちながら,6 時間を使って単元の内容を学習した。単元の内容としては,学習の進め方のガイダンスの他,絵を見ながら会話を聞いて場面を理解する聞き取りの活動,好きなスポーツや食べ物などを言うための語彙の補充,好きなものについて友達同士で聞きあう活動,名前のつづりに関係してアルファベットを聞き取って文字を探す活動,目標英語表現に特化したチャンツや歌などである。それらを学習した後に,「話すこと」のテストの内容や手順を説明し,リハーサルとして友達同士で練習する時間や自分で英語表現を確認する時間,教師に言い方を確認で
図 1. 対面テストの様子
きる時間などを十分に確保した後,1 人ずつ別室に移動し,ALTと対面で「話すこと」のテストを行った。「話すこと」のテストの内容は以下の通りである。児童が別室に入室したら ALT とあいさつをし,ALT の名前はすでに知っているため(1)名前のつづりを教えてもらう(How do you spell your name?),(2)ALT の教えてくれた名前のつづりを聞いて,机上にあるアルファベットのカードを並べ替える,(3)カードを 1 枚選び,裏に日本語で書かれているテーマ(スポーツ•色•食べ物•動物のいずれか)につ
いて好きなものを聞く(What· do you like?),(4)ALT が(3)の質問に答え,同様にカードを選んで
児童に質問し,児童がそれに答える(I like….)。
ALT は事前に共有した評価基準•規準に基づいて,やりとりしながらその場で名簿に評価を記入していった。第一著者はテストが円滑に進められるよう,児童に順番や動きを指示したり,他の児童の見守りや課題の確認,声掛けなどを行ったりした。
調査課題(1)「話すこと」のテストを経験する前後で児童のテストに対する不安はどのように変化するか,について検証するため,5 年生を対象に,「話すこと」のテスト実施後にテストを受ける前の気持ちについて思い出してもらい,「『話すこと』のテストをする前は,不安はありましたか?」と質問した。回答は,「とても不安だった」「少し不安だった」「ふつう」「自信があった」「とても自信があった」の 5 つの中から選択させる形とし,理由を書く欄も設けた。
また,2 つ目の質問として,「テストをする前と実際にテストをした後ではどのように気持ちが変化しましたか?」とテストの経験がどのように気持ちに影響を及ぼしたかに関する質問をしたが,児童に質問の意図がうまく伝わらず,質問 1 および 3 と合致しない回答の児童が見られたので,質問 2 は今回の分析対象から除外した。
3 つ目の質問として,テストを実際に経験した後に今後の単元での「話すこと」のテストについてどのように感じているかを,「これからの『話すこと』のテストに不安はありますか?」と質問した。回答は,質問 1 と同様に「とても不安」「少し不安」「ふつう」「少し自信がある」「とても自信がある」
の 5 つの中から回答させ,質問 1 と同様に理由を書く欄も設けた。
本実践および調査 2 の分析対象者は,茨城県内の公立小学校 6 年生 2 クラス合計 65 人である。ク
ラスに在籍している 68 人のうち,欠席者を除く 66 人にアンケート調査に回答してもらい,すべての質問に答えていなかった 1 人を除き今回の調査の分析対象とした。5 年生と同様,3•4 年生での外国語活動開始以前から,市内の他の学校と同様に小学校 1•2 年生で年間各 10 時間の外国語活動を経験している。今回の調査を行うにあたっては,調査前に内容や目的について参加者に説明するとともに,アンケートの結果は成績に影響しないことを伝え, 5 年生の時の経験を思い出して回答に協力してもらうよう説明し同意を得た。
第一著者が 2 クラスとも専科教員として,この学年が 5 年生の時から外国語科の授業を担当しており,週 2 時間の授業は毎回 ALT とのティーム•ティーチングで実施している。3•4 年生の時には,それぞれの担任と ALT が週 1 時間の外国語活動を担当していた。
6 年生は,前年度 1 年間の学習の中で様々な形式の「話すこと」のテストを経験した。テストの形
式,実施時期,実施単元の目標表現を以下の表 1 に示す。
表1 小学 5 年生で実施した「話すこと」のテスト
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教師と対面(個人)テストを行う際は,どの形式においても事前に日本語で場面設定を説明し,質問者や答える側などの役割を与え,条件に合えば英語表現については指定しないこととした。ただし,児童は指定された場面に使える英語表現を多く学習しているわけではなく,ほとんどの場合は教科書を使って学習した目標表現をそのまま使っていた。テストの場でも日本語の指示書を見られるようにしてあり,テストの際の会話の流れがどの児童も同じようにできるようにした。また,ペアでテストを行う際には,ペアの相手が話せないためにやり取りが止まってしまうなどの問題が起こらないよう,数秒待って沈黙している児童には教師がヒントを与えテストを進行させた。ペアの相手によってテストの流れや評価が変わることがないよう配慮することは,事前に児童に伝えた。
教師と対面(ペア)教師と 1 対 1 の対面形式で実施したのは,名前のつづりと好きなものについてのやり取りに関するテストである。教科として学習を始めた最初の段階では,児童が ALT と実際に一人一人英語を話す機会を与えたいと考え,この形式をとった。目標英語表現としては “How do you spell your name?”, “What sport(color / food / animal)do you like?”,“I like·” である。2.2.2 で述べたように,質問については,どれか分からない状態で選んだ 1 枚のカードの裏に,3 種類の日本語(スポーツ / 色 / 食べ物
/ 動物)のいずれかが書いてあり,そのトピックについての質問と答えをその場で考えさせる形とした。
他に,誕生日と欲しいものについての表現もこの形式で行った。児童一人一人の欲しいものの英語表現は,事前に個別に確認し練習させておいた。 “When is your birthday?”,“My birthday is·”,“What do you want for your birthday?”,“I want·” などの英語表現を使って ALT と聞き合う形をとった。
以上のようなテストの手順は事前に児童に伝え,練習時間も確保した後にテストを実施した。事前に伝えた順に児童が 1 人ずつ別室に移動し,ALT と児童が 1 対 1 でやり取りしながら ALT が評価しテストを行った。第一著者は,ALT と評価規準の確認を行った後,児童にテストヘの移動を促す声掛けや待っている児童ヘの指導など全体的なコーディネートを行った。
ペアで録音児童同士のペアを作り教師の前でやり取りをさせる形式では,店での食べ物の注文の丁寧な言い方,値段のやり取りについてテストを行った。このテストの目的は,(1)と同様に児童一人一人が実際に英語を話す様子を評価するためであるが,教師との 1 対 1 のテストでは,話す流れを教師がコントロールしがちになるため,児童同士で話す様子を評価したいと考えこの形式にした。授業で学習した食べ物や飲み物のメニューを使い, “What would you like?”,“I’d like·”,“How much is it?”,“It’s·yen.”を目標英語表現とした。単元の中では多くの食べ物や飲み物の言い方を学習したが, 児童がテストの際にメニューを決めるのに時間がかかり過ぎないよう,難易度が同程度の語をいくつか選んでおき,それらの中から選択させるようにした。値段についても同様に英語での言い方の難易度が同程度になるよう教師が値段を決めておき,数字を書いておいた。
(1)の形式と同じように,児童同士のペアが順番に別室に移動し教師の前でやり取りを行い,評価していった。このテスト形式では教師と児童が話すことは基本的にないため聞き取りながら評価ができればよいと考え,ALT と第一著者が 2 か所に分かれ同時進行でテストを行った。ALT と第一著者の評価規準は事前に相談•確認しておいた。
他に,地図を用いて建物や施設の場所を尋ねたり,道案内をしたりする内容もこの形式で行った。
ペアで撮影(1),(2)で述べた対面のテストでは,児童が英語を話す表情や体の動き,間なども含め話そうとする態度も評価でき,指導に生かせる利点があったが,全員の評価に時間がかかるという課題があった。1 クラスの人数が 34 人の学級だったため,対面のテストには授業時間 2 時間程度が必要であり,テストを待っている児童の学習の見守りのためにさらに教師の配置が必要であった。また,時間割の関係でテストを異なる 2 日間を使って行わなければならず,児童ヘの公平性の点でも課題があった。そこで,1 人 1 台端末の活用で児童が ICT 機器使用に慣れてきたこともあり,児童が各場所に分かれて同時にそれぞれ録音を行う形のテストを取り入れた。
内容は,なりたい職業や勉強したい教科についてのやり取りを扱った。“What do you want to be?”, “I want to be a·”,“What do you want to study?”,“I want to study·” を目標英語表現としたが,児童が本当になりたいと考えている職業名は,絵辞書に載っていないことが多く,事前に一人一人が教師と英語の言い方を確認し,練習してから録音に臨ませるようにした。この録音の形式では,「何度でも録音し直してよい」「自分たちが一番よく言えたと思うものを提出する」とやり直しを認めたため,多くのペアが 10 回以上録音するなど,目標表現を繰り返し言うことができていた。1 人 1 台端末に内蔵されたボイスレコーダーに録音することは全ペアがスムーズにできたが,学習支援ソフトを通しての提出に課題が見られた。児童の端末画面を電子黒板に示しながら提出方法を一斉で説明したが,個別支援が必要となった児童が一定数見られた。学習支援ソフト自体は日頃から児童が使っているものを使用したが,教師のみがデータにアクセスできる箇所に音声データを添付して提出するという,児童がこれまで使ったことがない機能を用いたため,操作方法が小学生には難しかったようである。
学習支援ソフトを通じて提出されたデータを後日第一著者が聞き,評価規準に基づいて評価を行った。評価の際に問題点が多く,音声データの質が悪く聞き取れなかったペアや,ペアの片方しか質問に答えていないなどの不完全なデータを提出したペア,機器操作の問題で提出されていなかったペア
が見られた。全員の評価が行えるように,個別に声をかけ再提出を促したり,代わって機器操作を行ったりした。
(5)1 人で発表図 2. 撮影テストの様子
ペアでのやり取りを動画に撮影する形式では,店での食べ物の注文の丁寧な表現,値段についてのやり取りに関するテストを行った。調査校の児童は,外国語に限らず顔を出しての撮影に抵抗感をもつ児童が多いことから,すでに一度「話すこと」のテストを行った内容について,レベルアップするために動画を撮影し振り返るという形で実施した。録音データでも分かる声の大きさ,発音やイントネーション,英語の正確性に加え,撮影データから
は自分たちの話す表情ややり取りとしての自然な動きなどを撮影したものから客観視し改善につなげてほしいというねらいがあり,撮影形式を取り入れた。
撮影した動画は,録音形式と同様に学習支援ソフトを通じて,他のペアは見られず教師だけが見られる箇所に提出させた。ここでも(3)同様,提出時の機器操作には,一斉で指示しただけではうまく提出できない児童が多く見られ,方法の説明と個別支援に時間がかかった。
学級全体の前で1 人ずつ発表する形式は,英語の学習に慣れてきた学年の後半に2 テーマで行った。教師と児童の対面テストや,ペアに分かれて同時に録音したり撮影したりする形式では,教師の評価はしやすいが,児童がお互いの英語を聞き合えないという課題があった。そこで,教師が評価を行いながら児童は友達の英語を聞くことができるよう,1 人ずつ発表する形式にした。“My hero is·”,“He
/ She is·” など第三者に関する英語表現を目標として,あこがれの人について紹介する内容か,好きな季節やその季節に行う行事などを説明する内容のどちらかを選択させた。いずれの場合も,聞き手が内容を理解しやすいよう写真や絵などの視覚的資料を事前に用意させ電子黒板に提示しながら発表させた。また,発表者 1 人が一方的に伝えるというよりも,疑問文の練習も取り入れたいと考え,聞き手の中から順番に “What season do you like?” や “Why do you like·?” のように質問させ,やり取り
らしくなるようにした。
(6)2 人以上で発表図 3. 1 人で発表している様子
評価の際は,児童が一人一人発表する様子を第一著者が評価していった。教師の指示がなくても児童が自分から動いて発表する場面を作る目的と,学級の全員に聞こえる声の大きさであるかも評価するため,教室の後方で評価を行った。ALT は発表者や質問者の近くに寄り添い,正しい英語表現をうまく言えない児童にヒントを与えたり,声が小さい児童の発言を ALT が繰り返したりすることで児童の心理的負担がなるべく少なく発表できるように支援した。
この形式については,表 1 に「調査後に 6 年生で実施」と示したように,アンケート調査後に実施したことに留意されたい。実施内容としては,6 年生になってから,おすすめの国について紹介するというテーマで行った。どこの国(地域)について話すのか国(地域)名を述べた後,“You can see / eat / visit・” などおすすめポイントを言い,それらについて “It’s great / delicious / big.” など詳しく説明し, “Let’s go to・” のように聞き手にすすめるというものである。この発表では,グループ活動に多く時間をとり,国(地域)を決め調べ学習を経て紹介内容を決めたり,聞き手に見せる写真を用意したりする準備や,伝えたい内容をどのように英語で表現しどのような順番で言うかもグループで考えさせた。英文の正確性について指導したのは言うまでもないが,グループ内で児童によって発話量が偏らないよう発表の分量や分担についても配慮し助言した。
複数で発表する形式を取り入れた理由は,児童の心理的負担への配慮である。1 人で発表を行った後の児童の振り返りカードや児童との対話から,1 人で学級全体の前で発表する際の児童の緊張感がとても強いことが分かった。そこで,児童の心理的不安を軽減するため, 1 人ではなくペアやグループなど友達と一緒に発表する形式を取り入れることにした。
評価の際は,一人一人の児童が発表する様子を,(5)の際と同様に第一著者が評価していった。グループ全体としての動きを見る目的と学級の全員に聞こえる声の大きさであるかを評価するため,教室の後方で聞きながら評価を行った。ALT は発表者グループの近くで英語表現について必要に応じて支援したり,発表内容について英語で質問したりした。
調査課題(2)どのような形式の「話すこと」のテストが児童にとって最も取り組みやすいのか,について検証するため,6 年生に 2.3.2 に示した(1)~(6)の 6 つの形式を示し,「最も嫌だと感じるやり方」を 1,「最もプレッシャーを感じないでできるやり方」を 6 として 1~6 の数値で答えさせるアンケート調査を行った。先述の通り,本調査を行った時点では,外国語の授業の中では「みんなの前でグループ発表」形式は経験していなかったが,他教科では何度も経験している形式であることから想像して回答するよう伝えた。
児童によっては数値の回答が 1~6 ではなく,すべて 1 で回答した児童やすべて 6 で回答した児童,また 1 と 6 のみを回答した児童など,様々なパターンの回答があったが,テストに対する態度を示すものとしてそのままの数値を使用して分析を行った。
以下の表 2 は,調査 1 におけるテスト実施前と実施後の不安度に関する回答割合を示したものである。テスト実施前と比較して,実施後では「不安」の割合が減り「ふつう」「少し自信」の割合が増加していた。このことから,「話すこと」のテストを一度経験することで,テストに対する不安度が減少し,自信を獲得した児童が一定数いたことが示唆される。
表 2 調査 1 における回答割合 (%)
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テスト実施前 |
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テスト実施後 |
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しかしながら,全ての児童においてそのような不安の減少傾向が見られたわけではないことに注意が必要である。以下の図 4 は,テスト実施前と実施後に対する回答の個人内変化,図 5 はテスト実施前と実施後に対する回答の差分を示したものである(langtest [Mizumoto & Plonsky, 2016] で作成した図を一部改変)。
図 4. テスト実施前•実施後の回答の個人内変化 図 5. テスト実施前•実施後の回答の差分
図 4 を見ると,必ずしも全ての児童で「不安」「自信」の方向(数値が上昇)に回答が変化したわけではなく,横ばいの児童や反対に「自信」「不安」の方向(数値が減少)に変化している児童も確認できる。また,図 5 からは,テスト実施前と実施後に対する回答パターンで最も多かったのは,回答が変わらない「変化なし群」(n = 22)であり,自信度が下がった群も一定数いた(n = 10)ことが確認できる。
表 3 は,テスト実施前と実施後に対する回答パターンごとに児童のコメントをまとめたものである。実施前と実施後で「自信」「不安」の方向に回答が変化した「不安度増群」では,今回のテスト自体はうまくいっていたとしても,今回は簡単で次はもっと難しくなるかもしれないという不安が述べられていた。実施前と実施後で回答に違いがなかった「変化なし群」では,「次もできる」というポジティブなコメントもいくつか見られたものの,これらは実施前でも実施後でもテストに対して「自信がある」と回答した児童のコメントであった。それでも,少なくともテストの実施によって自信を失うのではなく,自信が維持されていた児童であるといえるだろう。「不安」「自信」の方向に回答が変化した「不安度減群」では,一度テストを経験することで,ある程度の手順を理解できたり,褒められたり,思っていた以上にできたことでテストに対する自信が増したことが述べられている。
表 3 回答の変化の違いごとにおける児童のコメント
「不安度増群」のコメント
「変化なし群」のコメント
「不安度減群」のコメント
調査 2 におけるテスト形式に対する回答を,値が大きいほどそのテスト形式が好まれていることを
示す指標としてとらえ,それらを得点化して並べたものが図 6 である。
図 6. 「話すこと」のテスト形式の順位付け(縦軸が順位,横軸が好ましさを示す得点を表す。形式名の横の数字は,その形式に対する児童の回答の 1~6 の数値を合計した値。)
この図に示される通り,6 つの形式の中では「ペアで録音」が最も好まれる形式であった。似た形式の「ペアで撮影」は 2 番目に好まれていたが,これは 3 番目の「教師と対面(ペア)」と得点に大きな違いはなかった。一方,4 番目に位置する「教師と対面(個人)」は「教師と対面(ペア)」と大きく得点が異なり,「教師と対面」という形式は,一対一で行うか,他の児童とペアで行うかによって児童の好ましさが大きく異なることが示唆された。そして,5 番目には「みんなの前で 2 人以上で発表」,最後の 6 番目には「みんなの前で 1 人で発表」が並び,「みんなの前で発表」という形式が児童にとっては最も敬遠されていた。特に,この形式は発表を 1 人で行うか,2 人以上で行うかで大きな差があった。
表 4 は,それぞれのテスト形式に関する児童のコメントをまとめたものである。
表 4 テスト形式に関する児童のコメント
「みんなの前で発表」に関するコメント
「録音•撮影」に関するコメント
「対面」「1 人」に関するコメント
ペアに関するコメント
最も敬遠されていた「みんなの前で発表」という形式については,緊張や恥ずかしいというコメントが集まっており,不安度が高い形式であることが示唆される。「録音•撮影」については,やり直しができるから良いというポジティブなコメントもあった一方で,動画で顔が映るのを嫌がったり,機
材の不具合を懸念したりするコメントもあった。「録音だと正解が分からない」というコメントは興味深く,これは録音だけだと自分の発話がうまくいっているのかどうかが分からず,発話へのフィードバックの必要性を示唆するものである。また,教師の存在に関するコメントもあり,教師と対面だと身構えてしまうような児童もいることが分かった。ペアで行う形式については,ペアがいることで安心するというポジティブな面にコメントがあったものの,ペアが間違える可能性を懸念するコメントもあった。
上記の調査 1 の結果からは,児童が「話すこと」のテストを経験することで,テストへの不安が緩和される傾向が確認できたものの,全ての児童においてそのような不安の減少傾向が見られたわけではなく,不安がそのまま維持されていた児童や不安が高まっている児童もいた。その要因を以下のように考察する。
ある程度の不安の緩和傾向が見られたことについては,初めての経験に対する児童の心理的な影響が考えられる。5 年生児童は,これまでも音楽や体育などの教科でパフォーマンステストは経験済みであり,また,人前で話したり発表したりすることも国語や他教科で数多く経験していた。しかしながら,初めて教科として学習する英語において,人前で英語をテストとして話すという状況そのものが,児童に強い心理的緊張を与えたことは想像に難くない。「前にやったことがなかったから」「どんな問題か分からなかった」ためにテスト実施前は不安だったとの回答が見られたように,「話すこと」のテストを一度経験することで,次回以降はある程度不安が減少することは期待できるだろう。
一方で,全ての児童においてそのような不安の減少傾向が見られなかったことの理由としては,英語の学習にすでに苦手意識をもっている児童が一定数おり,その苦手意識を払拭することができていなかったことが考えられる。「話すこと」のテストに対して不安がそのまま維持された児童の多くは,指導者からみて英語力が中~下位の児童であった。4 年生までの外国語活動の学習あるいは日頃の生活からすでに苦手意識をもっている児童は,一度「話すこと」のテストを経験してもその気持ちは変わらず,不安が維持されたものと考えられる。また,「不安度増群」の児童からは,テストを行う際に
「(テストを)忘れていた」「テストって(事前に)言われたっけ?」「勉強していない」などの発言が聞かれた。これは,児童自身の要因に加えて,学習環境の現状を表している発言でもある。調査校においては,外国語の授業は週に 2 回であり,基本的に授業のみで関わる専科教員が授業を担当している。毎授業の最後に次時の内容予告は行っているが,時間的に間が空き,児童がテストの予定そのものや練習したことを忘れてしまうこともある。さらに,調査校では,担任でない教科担当が授業外に家庭学習の課題を提示することも難しく,多くの児童にとっては授業のみが英語の学習時間である。そのため,児童によっては事前の準備が十分にできているとは言えない状態でテストに臨むこととなり,「言えないところが多かった」との回答が見られたように,うまくできなかったと感じる結果となったことが考えられる。
加えて,今回の調査に関しては,教科として初めて英語を学習するにあたり,6 年生までの 2 年間の学習内容を教師が示したことがかえって児童に不安を与えた可能性もある。5 年生の最初の授業で,
6 年生の教科書の目次を見せ,「2 年間英語の学習をしたら,あんなことも英語で言えるようになるんだ。」と前向きな気持ちで学習に臨めるよう学習内容を知らせたが,そのことが逆に「あんなに難しいことをこれから学習するのか。」という不安をもたらし,「これから勉強しなきゃならない」「unit1 は簡単な方だと思うから」との回答にみられるような,これから先の学習への不安を与えてしまったのかもしれない。これらのような理由で,一部の児童においては,「話すこと」のテストを経験した後であっても,不安度に変化がなかった,あるいはかえって不安が高まったと考えられる。ただし,「不安度変化なし群」の中にはもともと自信度が高い児童もおり,テストを経験してそのまま自信が維持されたケースもあったことにも留意が必要である。
調査 2 では,複数のテスト形式に対する児童の態度を検討したが,テスト形式によって児童が感じる好ましさが大きく異なり,それぞれの形式の特徴がそのテストへの不安と関連していることが示唆された。
まず,最も好まれていた形式は,「ペアで録音」であった。その最も大きな理由は「やり直しができる」ことであったと考えられる。対面でテストをした後に児童から「もう一回やりたい」「リベンジ(再挑戦の意味)していいですか?」などの発言があったことからも,緊張して言えなくなってしまったり,英語表現を覚えていなかったりしてもやり直しができることは児童にとって大きな安心材料であったのであろう。同時に,自分たちが納得できるまで何度でも録音させたため,結果的に何度も目標英語表現を言うことになり,「言えるようになった」「できた」という達成感を自覚できたことも,この形式への好感につながったのであろう。加えて,友達とペアで取り組めることに,児童は教え合ったり確認し合ったりできるという利点を感じたのだと考えられる。これらの利点は同じくペアで行う撮影でも同様ではあるが,撮影よりも録音のほうがさらに好まれる傾向にあったのは,音声のみの記録のほうが児童にとってはより好ましいということであろう。
次に,「教師と対面」が好ましい形式とされていたが,録音や撮影よりもその好ましさが低かったのは,やり直しができないこと,そして教師の前での緊張感の 2 つの理由が考えられる。録音形式が好まれていたことの理由の裏返しで,1 回きりのチャンスであることへの心配と,教師の目の前で記録されながら話すという緊張感が理由で,録音や撮影よりも好感が低くなったのだろう。加えて,「教師と対面」では個人よりもペアのほうが好ましさが大きく高く,上記の録音の場合と同様に,個人で行うよりも協力したり相談したりできるという点が大きく影響した結果であると考えられる。
最後に,「みんなの前で発表」する形式が最も好ましさが低く,さらに 2 人以上で発表するよりも 1人で発表するほうが大きく好ましさが低かった。「みんなの前で発表」する形式が最も敬遠されるのは,小学校高学年という発達段階から生じる心理的要因が大きいと考えられる。この年齢の児童にとって,学級や小グループでの子供同士の人間関係は非常に重要なものであり,周囲から自分がどのように見られるかを気にするのは自然なことである。調査の中では「みんなの前でやるのは達成感がある」のように人前での発表を肯定的に捉えていたコメントもあったが,「みんなに見られるとプレッシャー」「人がいっぱいいると緊張する」などのコメントがあったように,多くの児童にとって人前での発表自体が不安要素となっている。ペーパーテストと違ってうまくできたかどうかは周囲にも一目瞭然で,自信がない場合には特に「間違えると恥ずかしい」のように感じるのは当然である。さらに「1
人で発表」が最も敬遠されたのは,友達と相談ができない,助けてもらえない,と児童が感じている ことに加え,聞き手の視線が自分 1 人に集中することへの緊張感が原因であることは想像に難くない。また,発表形式を敬遠するもう一つの理由として,みんなの前で発表する必要性を児童が感じられ
なかったことも考えられる。教師側からのアプローチとしては,他の児童がどんな内容を言うのかを聞き合いお互いに理解させたい,上手な発表を参考にしてほしい,多くの英語にふれさせたいという考えがあるが,児童側の心理としては,学級の人数が約 35 人と多いこともあり,似たような内容を何度も聞くことに飽きてしまったり,理解力が低い児童は聞いても意味が分からなかったりすることもある。発表内容としても,既習の語彙や文構造が限られた中で似たような英語表現や内容が多くなり,全員が発表するという意義を児童があまり感じられなかったのかもしれない。
児童の発話パフォーマンスを最大限に引き出し,英語を話す機会の一つとして児童に主体的に「話すこと」のテストに取り組ませるためには,テストそのものへの不安を軽減することが大切である。今回の調査結果及びその考察から,「話すこと」のテストを実践する際の留意点として以下の 5 点が示唆された。
点目は,「話すこと」のテストを継続的に実施していくことの重要性である。児童の記述回答より,
「話すこと」のテストを実施する前には不安を感じていた児童が,テストを経験したことで自信を獲得している様子が見られた。「話すこと」のテストが,単元末にいつも行う活動として児童の中に取り込まれれば,目標とする英語表現の定着が不十分だったとしても,テストそのものへの緊張感や不安はある程度軽減されるであろう。そのためには,「話すこと」のテストをどの単元でも継続的に行い,児童にとって「いつもの活動」となるよう実施していくことが大切である。
最も好まれない形式であると分かった「発表」を経験させなくてよいわけではない。人前で発表することの意味や重要性を理解させ,外国語に限らず大切な技能である発表に意欲的に取り組ませることも重要である。
最後に,最も重要なのが,テストの後に必ずポジティブなフィードバックを児童に与えることである。「ほめられてうれしかった」「OK と言われたから」とのコメントが調査 1 の不安度減群の中に見られたように,指導者から肯定されたり褒められたりしたことでテストへの自信を獲得した児童もいたことから,テスト後に自信や動機づけを高めるようなフィードバックを児童に与えることは,特に不安が大きくなりがちな「話すこと」の評価では重要な取り組みである。
第 1 節で述べたように,情意的な要因がパフォーマンスに与える影響は大人よりも子どもの学習者において大きくなる。また,英語を学び始めたばかりの児童については,いかに今後(中学校以降)の学習への動機づけを高めるかというのは重要な課題である。そのため,不安が小さく,児童の自尊心や動機づけを高め,「学習のための評価(assessment for learning)」を目指した「話すこと」のテストを模索し続けることが重要となるだろう。また,指導者は,「話すこと」のテストを診断的評価よりも形成的評価として活用し,児童にとっての話す機会の一つとして計画的に指導に組み入れることが望ましい。本調査の結果は,そのような評価•実践を行うための一助となるものである。
本実践論文には,調査の限界点と今後さらに改善•検討を重ねていくべき事項がある。まず,本論文で行った 2 つの調査には,方法論の面で改善の余地が残る。調査 1 は,「話すこと」のテスト実施後に行われ,テスト実施前を思い出してもらう形で事前の不安度を調査していたが,測定の妥当性の観点からはテスト実施前にデータを収集することが望ましく,この点について今後の改善は必須である。同様に,調査 2 では複数のテスト形式を扱ったが,「みんなの前でグループ発表」については他教科のことを想起させており,この点も留意が必要である。また,調査 2 については,6 件法でその両極を
「最も嫌だと感じるやり方」,「最もプレッシャーを感じないでできるやり方」としていたが,前者は好感,後者は心理的圧力について尋ねており,関連はしているものの, 厳密には 1 つの要因を測定しているとは言えないかもしれない。質問項目のワーディングについても,更なる検討が必要である。さらに,2 つの調査を通して行われたテストは異なる単元で行われており,当然それらで扱う言語材料やトピックなども異なるため,テストの内容や言語材料を統制しつつ,テスト形式のみを比較するための方法についても考えていく必要があるだろう。今後,これらの点を改善したうえで,より信頼性•妥当性の高い調査に基づいて実践への示唆を得ることが,本実践論文の大きな課題である。
また,本論文では,話すことのテストに対する不安と取り組みやすさを検討対象としているが,これらに対する理論的基盤の構築も必要である。テスト不安の先行研究や理論に基づきながら,不安と取り組みやすさがどのような関係にあるかについてや,テストを受けるうえで取り組みやすさがなぜ重要になるのかなどを理論的に検討し,そのうえで調査結果の考察や結論を導くことは,小学校英語の評価論に有意義な示唆を与えるために重要である。
その他,テスト形式以外の要因がテスト不安やパフォーマンスにどのような影響を与えるのかについても,今後検討が必要である。例えば,友人関係の満足度や緊張感などの児童の情意面が発話パフ
ォーマンスに影響を及ぼすことが分かっているように(山口•吉澤, 2023),「話すこと」のテストを行うペアとの対人関係や評価者との信頼関係の影響については今後の検証が望まれる。
最後に,本実践では「話すこと」のテストに初めて臨む児童の不安の変化と,テストの形式別の好感の差異について述べたが,そもそも実施後の児童ヘのフィードバック無しにテストを行うことはできない。第 3 節,第 5 節で述べたように,テストについてのフィードバックが,児童の「話すこと」
のテストヘの姿勢および英語学習に対して与える影響は大きい。小学校学習指導要領(平成 29 年告示)の中でも「,学習評価の充実」として指導と評価の一体化の必要性が協調されているところであり,主体的に学習に向かう自律的な学習者を育てるためにも,より効果的で効率的なフィードバックの方法や内容については,今後さらなる調査が必要になるだろう。
学習者•指導者双方にとってより意義のある「話すこと」のテストとなるよう,様々な点を考慮し多くの視点を取り入れながら実践を積み重ねていきたい。
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