国際保健医療
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「日本ではたらくベトナム人のための健康ハンドブック」を対象としたPEMATを用いた理解しやすさと行動しやすさの評価
藤井 美穂子須藤 恭子山内 こづえ宮林 菜々子岩本 あづさ藤田 雅美
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2025 年 40 巻 2 号 p. 71-81

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抄録

  新型コロナウィルス感染症(以下、COVID-19)パンデミックを背景に、2022年に「日本ではたらくベトナム人のための健康ハンドブック(以下、ハンドブック)」が作成された。本ハンドブックは、国立研究開発法人国立国際医療研究センター(National Center for Global Health and Medicine:以下NCGM)国際医療協力局が国際移住機関(International Organization for Migration:以下IOM)ベトナム国事務所から委託を受け、日本人の医療専門家が執筆し、ベトナム人医療者等の確認を経て製本版とPDF版が公開された。その後、みんなの外国人ネットワーク(Migrants’ Neighbor Network & Action:以下、MINNA)によりWeb版が作成された。Web版の多言語化を見据え、また行動変容を促進するヘルスコミュニケーションツールとしての有用性に着目し、Patient Education Materials Assessment Tool(以下、PEMAT)日本版を用いてハンドブックWeb版の日本語版を評価した。

  PEMATは患者や一般市民向け教育資料の「理解しやすさ」と「行動しやすさ」を評価する指標であり、移民向け健康教育資料や健康情報の評価にも活用されている。評価の結果、スコアは「理解しやすさ」が81.3%、「行動しやすさ」は66.7%であった。行動しやすさを改良するため、イラストの配置変更やフローチャートの活用などが提案された。評価指標を用いたことにより、関係者間で評価基準を共有しながら改良点について協議でき、教材を作成する上での視点を学ぶことができた。ただし、PEMATは文化的信念や価値観は評価対象外であるため、今後は日本で就労中または就労予定のベトナム人の視点からフィードバックを収集する必要がある。

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© 2025 日本国際保健医療学会
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