抄録
経済地理学者はグローバル経済化の動向に強い関心を寄せてきた.それに対してサービス経済化の地理的インパクトを取り上げた研究は手薄である.だが,現実の経済地理に対するサービス経済化のインパクトを無視することはできない.サービスは「貯蔵も輸送もできない」という特性を持っている.それは,モノの生産・消費が中心であった社会で作りだされた空間的なパターンを変化させていく.にもかかわらず,この事実は軽視されてきた.小稿では、サービス経済化の進展を踏まえて,今後の経済地理学の展開方向を検討する.その場合,川島哲郎氏の提起した「経済の地理学]という方向性に着目した.それを筆者は,経済循環の空間的組織化を通ずる地域構造の形成・変動として提示する.