1982 年 7 巻 3 号 p. 188-193
肝硬変期の原発性胆汁性肝硬変症 (PBC) 剖検例より得られた肝組織を電顕的に観察し, 浸潤リンパ球と肝細胞にみられた核内封入体について報告した。リンパ球にみられた核内封入体は紡錘形で限界膜を有さず, 層状ないし網目状の規則的な結晶様構造を呈していた。この核内結晶様封入体は multiple myeloma, Waldenström マクログロブリン血症などの高抗体産生能を呈する疾患でみられるものに極めて類似しており, PBCの免疫異常を形態学的にも示唆する所見と考えられた。肝細胞には類円形で膜構造を有する核内封入体がみられた。この肝細胞の核内封入体は PBC に特異的なものとは考えられなかったが, 唾液腺分泌細胞で報告されている核内封入体に類似しており, 肝細胞の機能の変化を反映しているものとも考えられた。